農薬の散布や測量、設備点検での活躍が期待されている「ドローン」。調査によると、2018年度のドローン市場規模は931億円に達し、一大マーケットへと成長しつつあります。
本記事ではドローン市場の現状と成長予測を解説し、現時点でドローンがどのように利用されているのか、また、将来的に活躍が見込まれる領域を紹介します。

2018年度の市場規模は900億円超、2024年には5倍に拡大

ITメディア関連事業を手がけるインプレスのシンクタンク、インプレス総合研究所は、2018年度のドローンビジネスの国内市場規模を931億円と推計しています。2017年度時点の503億円から428億円増加、前年比85%の成長を果たしました。
また、インプレスは同市場が2019年度には前年度比56%増の1450億円に達し、2024年度までには5073億円と2018年度の5.4倍の規模にまで拡大すると予測しています。
市場分野別に見ると、サービス市場が前年比134%増の362億円となり、昨年度最も高かった機体市場の346億円(前年比64%増)を追い抜きました。周辺サービス市場が前年比63%増の224億円で続いています。各分野ともに将来的な市場成長が見込まれており、2024年度にはサービス市場が3568億円(2018年度の約10倍)、機体市場が908億円(2018年度の約2.6倍)、周辺サービス市場が597億円(2018年度の約2.7倍)に達すると予想されています。

土木測量に災害支援 ドローン活用の現状を紹介

現在、ドローンはすでに多種多様なビジネス領域で実用化されています。
そのうち土木業界と災害支援におけるドローン利用の現状を取り上げて紹介します。

土木業:測量作業の効率化と低コスト化を同時に達成

近年、国土交通省は建設業界における人手不足と建設コスト削減を目指し、最新のICT(情報通信技術)を建設現場に導入する取り組み「i-Construction」を進めています。
その取り組みの一環として進められているのが、測量作業へのドローンの導入です。これまでの測量作業は人手で行うか、あるいは、航空機を利用して現場上空から空撮する手法が主流でした。しかし、人手で測量を行なえば時間がかかり、航空機を使えばその分コストが増大するというデメリットがあります。
これに対しドローンを使った空撮は、航空機より機体の購入費を低く抑えられるうえ、人手なら1週間は必要となる作業を3日程度で終わらせることが可能です。

災害支援:倒壊状況を上空からモニター可能に

航空法の存在により、ドローンは人口密集区域を許可なく飛行することは認められていません。ちなみに、2019年5月のラグビーワールドカップ2019、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けて、ドローンに関する特措法が追加され、関連施設上空のドローン飛行は禁止されました。
さまざまな法令により、飛行禁止区域が定められているドローンですが、災害時だけは例外です。被災地域の自治体から要請があれば飛行禁止区域でもドローンを飛ばすことが出来ます。
実際に、2016年に発生した熊本地震では、NTT西日本が電信柱の倒壊状況などを確認する被害把握のためにドローンを使用したという事例があります。このような救助支援用ドローンの活用は、今後災害現場で徐々に普及していくと見られています。
また、熊本地震では被害状況を把握するためだけにドローンが用いられましたが、作業用ドローンの開発も進んでいます。今後は人間の立ち入りが制限される被災地区で、作業用ドローンを使った復旧作業も行われるようになるでしょう。

ドローンの活用領域と関連サービス市場の拡大

ドローンの活用領域は今後さらに拡大すると見られています。なかでも、特に高い注目度を集めているのが物流と農業での活用です。

物流:ドローン配送の実現に向け実証実験が活発化

物流業界は現在、ドライバーの高齢化に起因する労働力不足に悩んでいますが、ドローン導入はこうした課題を解決する有力な手段になると考えられています。
日本政府は「日本再興戦略2016」のなかで2020年代のドローン配送を目標として掲げており、その影響を受け民間企業によるドローン配送の実証実験も活発化しています。たとえば楽天はドローン配送サービス「そら楽」の本格的な展開に向け、携帯電話のLTEネットワークを使ったドローン制御と配送サービスの実証実験を千葉市で実施、成功を収めています。
ただし、ドローンは地理条件や天候条件などによっては飛行できないという問題があります。そのため、ドローン配送サービスの本格的な市場展開はまだまだ先のこととなる見通しです。

農業:農薬散布の省力化と効率化に貢献

高齢化による労働力不足が深刻化する農業分野では、農作業における省力化や若年就農者への技術継承などを目的としたICTの活用が活発化しています。その取り組みのひとつとして、ドローンを農作業に用いるという試みもあります。なかでも、最も注目されているのが農薬散布への活用です。
これまでにも無人ヘリコプターを使った農薬散布は行われてきました。しかし、ヘリがあまりに高価格であることから農家にとっては導入しづらく、また輸送も不便であるといった問題点を抱えていました。
しかし、ドローンを活用すれば、導入コストを低く抑えられるうえ、1人でも手軽に散布作業が行えるなど労働負担の軽減効果も狙えます。また、ヘリよりも至近距離で散布することができるので、農薬の量を減らしながらより高い効果が得られやすくなることもメリットといえます。

活用領域の拡大とともに、機体の定期メンテナンスや任意保険といったドローン関連サービスも市場拡大を遂げると予想されています。ドローンビジネスが今後どのような盛り上がりを見せるのか、市場動向に注目です。