インバウンド向けのホテルで、無料のスマ―トフォンレンタルサービス「handy(ハンディ)」が急速にシェアを拡大しています。サービス運営元のhi Japan(世界82カ国で展開するhi Incの日本法人)には2017年の創設時にシャープが出資をし、handyへのスマ―トフォン供給を担っています。また、2018年にはソフトバンクも出資をし、旅行者向けのホテルIoTなどの共同開発を進めています。

本記事ではhandyのサービス概要とシェア拡大の背景を紹介し、handyへの出資を決めたシャープやソフトバンクの狙いを解説します。

急成長中のスマートフォンレンタルサービスhandyとは?

handyは香港のベンチャー企業ティンク・ラボが2012年に開始したスマートフォンレンタルサービス。handyに登録したホテルの客室に用意されたAndroidスマートフォンを、宿泊客が自由に持ち出して無料で使えるサービスです。スマートフォンには専用のホーム画面が搭載されており、ホテルのホームページのほか、ホテル周辺の観光情報や飲食店の情報が入手可能です。

現在、handyは世界中で急速にシェアを広げています。本拠地である香港はもちろん、日本での成長ぶりにも目覚ましいものがあります。全国にあるホテルの総客室数は約87万室と推定されていますが、これに対してhandyはすでに23万台の設置に成功しました。つまり、2017年7月にサービスを開始してから、すでに4分の1以上のシェアを獲得したことになります。

handyの成長は留まるところを知りません。ホテル以外に旅館や民泊、観光案内所などにサービス提供の場を広げる方針を打ち出すなど、国内シェア拡大を狙ったさまざまな施策を次々に展開中です。

handy導入は宿泊客とホテル双方に大きなメリットが

こうした急成長の理由として、handyが宿泊客とホテルの両方にメリットをもたらすサービスであるということが挙げられます。

通話無料、データ通信量上限なしの高い利便性

まず、宿泊客はhandyを通じて利便性の高いサービスを受けられます。国内・国際電話やデータ通信など、宿泊客は無料で利用ができます。ホテル情報や周辺の観光案内などのコンテンツも利用可能。また、外出先からでも、ホテルのコンシェルジュサービスを手軽に利用できます。さらに、データ通信の通信量は無制限に設定されているため、Google マップやYouTubeなどデータ通信量の比較的大きいアプリも安心して使えます。旅先で撮影した写真もすぐにGoogle フォトにバックアップできるなど、旅行客にとっては重宝するサービスだといえるでしょう。

効果的なプロモーション施策立案が可能に

handyを導入するメリットは宿泊客だけでなく、ホテル側にもあります。最大の利点はスマホの使用履歴を解析することで、宿泊客の行動履歴をマーケティングデータとして活用できることでしょう。例えば、ブラウザの使用履歴を解析すれば、宿泊客の使用言語と旅行目的が統計的に把握できます。これらのデータを蓄積していけば、ホテルはより効果的なプロモーションを打ち出せます。
また、スマートフォンを通じて宿泊客とのコミュニケーションが取りやすくなるのも大きなメリットです。レストランや周辺駅への送迎がスムーズに行えるほか、地震など災害時の安否確認にも活用可能です。

創業資金を出資、連携強化も予定するシャープの狙いとは?

日本国内におけるhandyのサービス運営はhi Japan(創設時社名 handy Japan)が担っています。hi Japanはシャープとの合弁会社であり、創設時にシャープから30億円の資金提供を受けています。handy Japanの使用するスマートフォンは、すべてシャープによって納入されたものです。日本のネットワーク環境に最適化させた端末を提供しています。

シャープは今後、handyとのさらなる連携強化を目指す方針を打ち出しています。ホテル向け空気清浄機とのIoT連携に対応させて販売促進をする施策のほか、要望があればhandy専用のスマートフォン開発も進められる用意があるとしています。

このように連携を強化する背景には、シャープがスマートフォンや家電事業で掲げている「モノの人工知能化」、AIoT(AI×IoT)構想があります。AIoT構想とは、各種デバイスやサービス、クラウドをベースとしたプラットフォームを互いに組み合わせ、総合的なソリューションを提供するというプロジェクトです。このコンセプトを実現するためには、ソリューションのユーザーがIoTを一元的に管理、操作するデバイスをあらかじめ所持していることが大前提となります。そのため、シャープは無料スマートフォンを大量にレンタルするhandyのサービスに注目したのです。

サービス開発や営業面でも協力体制をとるソフトバンクは

2018年7月に資本・業務提携を締結し、hi Japanに出資したソフトバンクは、通信インフラの提供だけでなく、サービス開発や営業面でも協力体制をとっています。ソフトバンクと提携したことで、handyは鍵の代わりになるスマートロック機能などのホテルIoT機能の共同開発が可能となりました。世界の様々なIT企業との連携を進めているソフトバンクは、handyを単なるスマートフォンではなく次世代の観光インフラのIoTプラットフォームとしてとらえており、handy上で展開されるサービス・コンテンツや、取得できる観光客のデータに基づいた分析などが、新たな事業を生み出す力となりうる、と提携に至ったようです。

東京オリンピック開催に向けてさらなる成長が期待される

2020年の東京オリンピックに向けて、旅行業界ではインバウンド観光客が増加すると予測されています。handyとシャープ、ソフトバンクが密に連携してさらなるシェア拡大に成功すれば、多大な利益を獲得することになるでしょう。
今後のhandyの動向に注目です。