現在、世界各国で流行中の民泊サービスを展開するアメリカの大手企業「Airbnb(エアビーアンドビー)」は、今後のアメリカ経済に大きな影響を与えると予想されているSpotify、Lyft、Airbnb、WeWorkの頭文字をとった通称「SLAW」のうちのひとつであり、その著しい成長ぶりに注目が集まっています。

本記事ではAirbnbの提供するサービス内容を紹介します。その後、日本国内における民泊ビジネスの事例を紹介し、最後に現在の民泊ビジネスにおける問題点を解説していきます。

Airbnbはどんなサービス?

Airbnbは、部屋を貸したい人と借りたい人をマッチングする民泊仲介プラットフォームサービスです。2017年には登録物件数が全世界で400万件を突破し、今なお物件数、利用者数ともに増え続けています。

利用客とホストの信頼性をしっかり担保

Airbnbの利用手順はシンプルで、誰にとっても利用しやすい仕組みが整えられています。利用者はサイト上で自分のプロフィールを登録したあと、泊まりたい地域や宿泊希望日程、宿泊人数などを指定して宿泊先を検索します。目当ての部屋が見つかったら、その部屋の貸し主(ホスト)に部屋の利用を申し込み、無事承認がもらえれば予約手続きは完了です。

民泊というサービスの性質上、一番問題になるのは利用者とホストの信頼性です。相手が信用できる人物ということが保証されていなければ、部屋の貸し借りはできません。

この点についてAirbnbは、利用者にプロフィールの登録を義務付け、またホストの公開評価システムを導入するなどしっかりと対策をおこなっています。これにより、ホストは身元が確かな利用客だけを受け入れられるようになり、また、利用客は評価点を参考にしてホストを選ぶことが可能となっています。

ホテルよりも安価に宿泊可能!

Airbnbを利用する大きなメリットのひとつに、ホテルなどの宿泊施設を利用する場合よりも宿泊費が安く済む可能性が高い、という点が挙げられます。もちろん、民宿であるためホテルのような充実した設備は期待できません。しかし、とにかく旅費を安く抑えたいという観光客にとっては大変魅力的なサービスだといえるでしょう。

また、ホストによっては一緒に食事をするほか、観光スポットを案内するといったもてなしをしてくれる場合もあります。このように旅行先で現地の人と直接交流するという貴重な体験が味わえる点も、大きな支持を受ける要因です。

国内での民泊サービス解禁に向け、法整備も着実に進行中!

Airbnbを筆頭に世界中で盛り上がっている民泊サービスですが、日本においても2018年の6月15日から施行される「住宅宿泊事業法(民泊新法)」をきっかけに本格的な市場成長が始まると予想されています。民泊新法とは、全国的な民泊サービスの解禁を目的として制定された法律です。民泊を住宅として法的に位置付けることにより、住宅街でも民泊の営業を可能にし、民泊ホストを増加させる狙いがあります。

一方で、民泊サービスの無秩序化を防ぐため、さまざまな制限も設けられています。例えば、ホストの年間営業日数は180日以内と上限が設定されているほか、ホストは都道府県知事への届出が必須となり、また民泊仲介業者も国土交通省への登録が義務化されました。こうした基準を設けることで、今後、日本で健全な民泊サービスが成長していくための土壌づくりを行うことが目指されています。

みずほに楽天、全国で広がる民泊事業の事例紹介

民泊新法の施行による本格的な民泊サービスの普及開始に先駆けて、すでに国内では大企業による民泊産業への参入が相次いで発表されています。

Airbnbと提携して民泊向け保険サービスなどを創出:みずほ銀行の事例

2017年7月、みずほ銀行はAirbnbと民泊関連のサービスに関する業務提携を結んだと発表しました。

これまでみずほ銀行が蓄積してきた顧客基盤や会社情報を、Airbnbの民泊仲介プラットフォームと組み合わせることにより、新分野のビジネスが創出可能になると期待されています。具体的には、みずほ銀行の取引先から社宅などの民泊に適した遊休資産をピックアップして提供するサービスや、既存の民泊サービスを対象とした独自の損害保険などが構想されているようです。

さらに、民泊サービスに関連する事業主を対象とした融資サービスもリリースされる予定で、みずほ銀行は今後、一層民泊サービスに注力していく姿勢を見せています。

Booking.comと楽天

楽天グループの民泊サービス会社LIFULL STAYは2017年11月、世界最大のオンライン宿泊サイト「Booking.com」との業務提携に合意しました。

Booking.comは旅館やホテルなど日本国内の宿泊施設だけで約1万8500件の情報を揃えているサイトです。ユーザーは宿泊施設ごとの料金などの情報を比較したうえで宿泊先を決めることができます。

これまでBooking.comは日本国内の民泊情報については扱っていませんでした。しかし、今回の提携によってLIFULL STAYがリリース予定の民泊情報サービス「Vacation STAY」と情報共有が可能になり、Booking.comにも国内民泊施設のデータが掲載されるようになると予想されています。

近隣住民とのトラブル……民泊解禁が抱える不安と課題

国内でも急速に関心が強まりつつある民泊ビジネスですが、一方で、民泊解禁によって近隣住民と宿泊客の間で起こるトラブルへの懸念も広がっています。特に問題となっているのは、マンションにおける民泊の事例です。実際に一部のマンションでは民泊の利用を規制しはじめています。

ゴミや騒音、セキュリティ面での不安も

マンションにおける民泊では、共用施設の利用や騒音などの宿泊者のマナーをめぐるトラブルが多数報告されています。エントランスホールなどマンションの共用部分を勝手に占有するといった迷惑行為のほか、ゴミの分別をきちんとしない、真夜中に仲間内で騒いでうるさい、などという住民からのクレームが頻繁に物件管理者に寄せられるようです。

また、本来は住民ではない宿泊客をマンション内に招き入れることは、セキュリティの面でも大きな問題があります。

多くのマンションに備え付けられているオートロックですが、民泊の宿泊者には解錠方法を伝えなくてはなりません。そのため必然的にセキュリティ効果が弱まってしまうのです。万が一、悪意ある宿泊者がマンション内部に侵入すれば、犯罪が生じる危険性もあります。これらの理由から、現在、住民だけでなく管理組合の間からも民泊ビジネスに対して適切な規制を求める声が強まっているのです。

安心安全な民泊サービスの実現を目指して

Airbnbをはじめとする民泊ビジネスは、安価な旅行が可能になることから、世界中の旅行客の間で大きく支持されています。
日本においてはこれまで法的にグレーな部分も多かった民泊ビジネスですが、民泊新法の施行により合法化されることで、いよいよ日本でも本格的な市場拡大が始まります。
一方で、民泊利用者と近隣住民のトラブルが増加することも予想されており、安心で安全な民泊サービスを実現するためにはまだまだ多くの課題が残されているといえるでしょう。