安倍内閣が掲げる「働き方改革」を背景に、官民連携の「プレミアムフライデー」2回目が3月31日に実施されました。当日は年度末ということもあり、「どれだけの企業が実施するのか」と、その動向が注目されていましたが、プレミアムフライデー推進団体「プレミアムフライデー推進協議会」の調査によると、社員の早期退社に取り組んだ企業が1回目調査に比べ倍に拡大するなど、一歩前進の様相が見られます。
プレミアムフライデーは無事定着するのでしょうか、推進状況と働き方へ与える影響について調べました。
プレミアムフライデーとは?
プレミアムフライデー(通称「プレ金」)とは、官民連携の「プレミアムフライデー推進協議会」が提唱・推進している個人消費喚起キャンペーンのことです。
「働き方改革」の一環として、企業が「月末金曜日は午後3時の退社」を推進することで、当日の夕方は社員に買い物や外食を楽しんでもらい、個人消費を喚起するのが狙いとされています。
これについて、経済産業省は同省のニュースリリースで、
プレミアムフライデーとは、個人が幸せや楽しさを感じられる体験(買物や家族との外食、観光など)や、そのための時間創出を促すことで、
- 充実感・満足感を実感できる生活スタイルの変革への機会になる
- 地域などのコミュニティ機能強化や一体感の醸成につながる
- (単なる安売りではなく)デフレ的傾向を変えていくきっかけとなる
といった効果につなげていく取組みです。また本取組みを進めるに当たっては、働き方改革などライフスタイルの変革ともあわせて推進してまいります。
と説明しています。
では、プレミアムフライデーを実施する企業には、どのようなメリットが想定されるでしょうか。
プレミアムフライデーのメリットとは?
プレミアムフライデー実施のメリットに関してはさまざまな意見が交わされていますが、それらの意見は次の2点に集約されます。
有給休暇消化率の向上
旅行情報総合サイト「サイト・エクスペディア」の日本語サイトを運営するエクスペディア・ジャパンが2016年12月15日に発表した『世界28ケ国 有給休暇・国際比較調査2016』によると、日本人の有給休暇消化率は50%で、28カ国中最低でした。
しかも、消化率が最低にもかかわらず、「休みが不足している」と感じている人は34%と、こちらも最低でした。
「日本人は働き好き」という国民性もあるようですが、「有給休暇取得に罪悪感がある人の割合」を見ると、日本人は59%で、28カ国中2位でした。こうした調査結果からも、「有給休暇を取りたいが周りの人が取らないので取りにくい」とする職場環境の影響がうかがえます。
プレミアムフライデーは、こうした有給休暇を取りにくい職場環境改善の契機になるといわれています。
多様な働き方の促進
これまで、日本の企業には「長時間労働を美徳とする風土がある」と指摘されてきましたが、最近は働き方改革推進の影響もあり、経営者の間には長時間労働を是正しようとする機運が盛り上がっています。プレミアムフライデーはこれを後押しし、多様な働き方を実現する契機になるといわれています。
「月末の金曜日は3時に退社しよう」との明確な目標を掲げることで、普段から社員は業務効率化を意識するようになり、労働生産性向上に繋がる。ひいてはそれが働き方の意識改革を促し、フレックスタイム勤務、在宅勤務など多様な働き方が実現できる流れになるというものです。
次に「プレミアムフライデーの現実」を実施前と実施後の調査から探ってみましょう。
プレミアムフライデー、実施前と実施後で分かったこと
プレミアムフライデー初回実施を目前にした2017年2月8日~14日にかけ、プレミアムフライデー推進協議会が行った『企業における働き方改革の検討状況に関する実態調査』(2017年2月16日発表)によれば、76.4%の企業・団体が「プレミアムフライデーを契機とした働き方改革を検討している」と回答するなど、幸先の良さを感じさせました。
次に、プレミアムフライデー初回実施(2017年2月24日)直後の2月27~28日に同協議会が行った『第1回プレミアムフライデー実態調査』(3月15日発表)によると、プレミアムフライデーに早期退社した社員は17.0%。このうち、7.6%が会社の推奨、9.4%が社員の自主判断でした。初回というハードルの高さもあってか、結果はスロースタートでした。ただ、早期退社した社員の86.7%が「プレミアムフライデー当日は普段と異なる豊かな時間を過ごすことができた」と答えるなど、プレミアムフライデー狙いに沿った行動をした様子がうかがえます。
また、プレミアムフライデーに社員の早期退社に取り組んだ企業の81.6%が「(プレミアムフライデーは)働き方改革の効果があった」と回答しています。
そして、2回目実施(3月31日)直後の4月1~2日に同協議会が行った実態調査では、プレミアムフライデーに早期退社した社員は37.3%で、初回比2.2倍に拡大しました。「プレミアムフライデーは早期退社」に取り組む企業・団体も拡大しました。初回時、その数は136社でしたが、2回目直前の3月28日は316社で、前回比2.3倍に拡大しました。
早期退社に取り組んだ企業・団体の規模別内訳は従業員1000人以上40.7%、同100人以上1000人未満は30.3%、同100人未満は29.0%で、規模別の差はあまり見られません。
100人未満企業の場合、社内の合意形成がしやすく、さらにプレミアムフライデーの早期退社の取組みが、ワークライフバランスに配慮した企業であることのアピール効果も狙った結果と見られています。
メディアのなかには「お手並み拝見」と様子見の姿勢も一部見られますが、プレミアムフライデー推進活動はまだ離陸に向けたタキシング段階。今では当たり前の週休2日制も、当初は大企業のみの実施にとどまっていた事実を思い起こせば、現時点でプレミアムフライデーの行く末を論ずるのは時期尚早かもしれません。
プレミアムフライデーの課題
プレミアムフライデー推進協議会の実態調査では、プレミアムフライデー実施に向けて必要なこととして、「経営層の意識改革」56.6%、「管理職の意識改革」38.5%、「社員の働き方の改革」34.1%がベスト3に挙げられており、プレミアムフライデーの課題と考えられます。その意味で、プレミアムフライデー実施の度合いは、働き方改革の進捗度を計る指標になるかも知れません。
参考サイト
・新聞・雑誌記事検索サービス|G-Searchデータベース
約150紙誌/過去30年以上にわたり収録した新聞・雑誌記事情報を一括検索できるサイト。
・企業における働き方改革の検討状況に関する実態調査
・第1回プレミアムフライデー実態調査
・第2回プレミアムフライデー実態調査
プレミアムフライデー推進協議会事務局による発表資料(PDF)
・有給休暇・国際比較調査2016
エクスペディアによるプレスリリース発表