本記事は、2011年11月10日に掲載された、G-Search sideB記事を再掲載しています。

今、日本は空前の自転車ブームだそうだ。本屋には多くの自転車専門誌が並び、街にはスポーツ自転車があふれている。
自転車を始める理由は、ガソリン高騰やメタボ予防、環境や財布のエコなど人それぞれだが、3.11の東日本大震災以降は、災害時の移動用という理由も加わり、自転車を通勤に利用するツーキニストも増え、ブームに拍車がかかっているという。

自転車は本来、車道を通行するのが原則であるが、日本の車道は狭く、車道は路上駐車があふれているため、やむを得ず歩道を通行することが多い。 歩道での自転車は走る凶器となり、自転車と歩行者との事故が相次いで問題なっているのだ。
さらに、駅前には放置自転車があふれ、都心のマンションでは増え続ける自転車の置き場に苦慮するなど、まだまだ「自転車後進国」の日本の自転車ブームについて、今回はG-Search新聞雑誌記事横断検索を使って調べてみよう。

自転車先進国では?

自転車先進国と言われる欧米では、一九九〇年代後半から環境問題だけでなく、高齢化社会の観点からも自転車を推進してきた。
車優先の社会から自転車や歩行者優先の社会へ交通政策の転換を行い、地球温暖化や歩行者と車の共存とともに、地域活性化のために自転車の有用性を考えた施策を講じた結果、自転車利用の増加で交通安全意識が格段に上がったり、生活習慣病が抑えられ、医療費の軽減につながるなどの効果をもたらしたという。

自転車先進国としてよく名前のあがるオランダやドイツでは、都市のほとんどに自転車専用の道路や標識が豊富に整備され、各地に数千台単位での収容が可能な大規模な自転車置き場があり、修理コーナーや洗車機なども設置されているという。

中心部では自動車より自転車の方が便利という理由で、都市の入り口に自家用車を置いて自転車や公共交通機関に乗り換える場所「パーク&ライド」が設けられていたり、列車にも自転車が持ち込める他、レンタサイクルも充実している。

こうした自転車の先進地は、アムステルダム(オランダ)、ミュンヘン(ドイツ)、パリ(フランス)、オスロ(ノルウェー)、バルセロナ(スペイン)、コペンハーゲン(デンマーク)、サンフランシスコ(アメリカ)など、欧米の都市がほとんどである。

台湾の自転車事情

欧米よりも少し遅れている感のあるアジアの自転車事情だが、台湾では日本よりも少し早く、自転車ブームが起きていたようだ。

台湾と言えば、自転車よりもバイク天国というイメージで、台北などの街中は空気の悪さが否めない。
それを裏付けるように、二〇〇七年の一人当たりの二酸化炭素(CO2)排出量は日本や韓国を抜いてアジア一位で、政府はその対策のため、補助金を出すなどして交通手段を自動車、バイクから電動バイク、電動自転車、自転車への移行を行った。

また、一九九八年以降、通勤・通学用に、市街地部分二百八十八キロを含む合計二千百七十キロの自転車専用道を整備したほか、台北市内のMRT(地下鉄)でも自転車を持ち込めるようにして、十数年をかけて自転車を推進してきたのだ。

また、台湾には、高級自転車の世界トップブランドである「ジャイアント(捷安特)」があることも大きく影響している。
一九七二年に創業したジャイアントは、米国大手メーカーのOEM先として、マウンテンバイクブームの波に乗って成長を遂げた。

しかし、大量生産と低価格路線に行き詰まりを見せたため、OEMで培った技術や経験を自社ブランドの確立と高級自転車市場への参入に注力し、今では台湾を代表する世界トップクラスの自転車メーカーに成長した。

台湾での自転車ブームの裏には、こうした政府と民間企業が一体となった取り組みがあったのは言うまでもない。

日本でも早急に整備を!

一方、日本では、自転車ブームを受けて、規制や仕組み作りが議論され始めたばかりである。
道路や置き場、規制や教育など、問題山積だが、健康にも環境にも、お財布にも優しい良いこと尽くめの自転車をブームで終わらせないためにも、欧米や台湾のノウハウを取り入れ、国が主導でインフラを整備して欲しいものである。