本記事は、2009年2月25日に掲載された、G-Search sideB記事を再掲載しています。
近年、普段の生活の場においても特許製品を見る機会が増えてきました。
本コラムでは、消費者・生活者の目線で、特許がどのように生活に関わって、豊かにしているのか、ビジネスとして大事なのか、G-Searchデータベースサービスを利用してご紹介します。
特許とおいしい食べ物の「味」とは?
仲間と食事に出かけて、おいしいものを食べて、「この味は、この店の専売特許なんだって!」なんて話をしたりします。そこで、「味」って本当に特許になるのかな?と疑問がわきます。
そもそも「味」ってどんなものがあるのでしょう?
味には、1.酸味(さんみ)、2.苦味(にがみ)、3.甘味(かんみ、あまみ)、4.塩味(えんみ・しおあじ)があります。
この四つの味とは異なる、新たな味を発見した日本人がいます。
日本人による「うま味」の発見!
和食では、古くから料理に昆布だしが使われていました。「昆布のおいしさ」には、酸味や塩味とは違う”何か”があることを、日本人は早くから気が付いていたと考えられます。
今から百年前、東京帝国大学教授の池田菊苗博士が、家族と「湯どうふ」を食べていた時、昆布だしの味のもとは何か?疑問が湧いたのです。
早速、大量の昆布を分析した結果、グルタミン酸がうま味の本体であることを突き止めました。それを「うま味」と命名しました。1908年のことでした。
その後、調味料の製造法特許を取得してから事業化しました。それが「味の素」なのです。※明治41年(1908年)4月24日に特許出願、同年7月25日 特許14805号として登録されました。
特許権とビジネス化
大学教授の池田博士の思いは、安価な調味料を開発して、当時の日本人の食生活を豊かにし、栄養状態を改善したいという志がありました。
池田博士の研究成果を事業化したのは、実業家の二代鈴木三郎助氏でした。この産学連携が味の素株式会社の創業のきっかけだったのです。
特許登録後、その共有の権利者として事業を任された二代鈴木氏が味の素と名付けました。商標出願して登録商標になりました。この新しい調味料は、どんどん市場を広げていきました。
模倣品に対しては、特許で対抗して市場から敗退したのです。味の素は日本国内のみならずアジアを始め世界へ進出しました。味の素によって、食生活が豊かになったことは言うまでもありません。
その後の研究と事業化は、アミノ酸事業へと発展しアミノ酸発酵のイノベーションへとつながっています。
グルタミン酸の発見は、「日本の十大発明」
日本の特許制度は、昭和60年4月に創設以来百周年を迎えました。
特許庁では、それを機に歴史的な発明者の中から永久にその功績をたたえるのにふさわしい方々を選定することになりました。選ばれた10名の発明家に池田博士がいます。
東京都千代田区霞が関の特許庁本庁舎に十大発明家のレリーフが展示されています。