本記事は、2010年11月8日に掲載された、G-Search sideB記事を再掲載しています。

書店の一角に随分と分厚い雑誌が積まれたコーナーをよく見るようになった。雑誌サイズの箱がセットになったそれらには女性物の有名ブランドのアイテムが付いている。既に書店の見慣れた光景となった付録付き雑誌と呼ばれるものだ。

雑誌販売の不況が叫ばれる中、100万部を超える商品も登場するという付録付き雑誌、その人気の秘密と企画について「G-Searchの新聞・雑誌記事横断検索」を使って調べてみた。

発端は雑誌協会の自主規制緩和

こうした付録付き雑誌が登場したのは、雑誌市場の活性化を図り2001年に日本雑誌協会がプラスチックや金属を使った付録の流通に関する自主規制を緩和した事がキッカケだ。

その背景には1996年をピークに雑誌の売上が減少を続け、2008年にはピークから25%も減少した雑誌不況がある。 これを皮切りに、各雑誌が付録を競うようになったのだ。

いろいろな付録

雑誌の付録の代表は、ブランド物のトートバックや小物入れだが、今や実に多彩な付録が登場している。新聞記事でざっと調べてみただけでも次のような付録が見つかった。

  • 組み立て式のミニエレキギター(大人の科学マガジン)
  • 野菜栽培キット(「我が家でミニ野菜をつくる」シリーズ)
  • ケーキの型(Paris発、パウンド型で50のケーク)
  • 化粧品(イヴ・サンローランムック)
  • 子供向け調理キット(親子のたいやきくんお楽しみBOOK)
  • 遺言書(遺言書特別パッケージ)
  • 手ぬぐいや家紋シール(RYOMA GRAPHICS~坂本龍馬と生きた幕末の100人)

宝島社の独走

付録付きの雑誌で最も売れているのが宝島社だ。

宝島社は、計70以上のブランドとバッグなどが付いたムック本を展開しているが、なかでも売れているのがファッション誌「スウィート」。日本ABC協会によれば、09年の発行部数は前年同期比144%、やはり宝島社のインレッドが146%、スプリングが120%と、全雑誌の伸び率上位3位を宝島社が独占した。

出版不況下の中で「スウィート」は107万部発売、イヴ・サンローランのロゴが入った黒の布製トートバッグ付きムック本も100万部を超え、過去最高の発行部数を記録するなど、勢いが飛び抜けている。

しかしこれだけ鞄の付録が売れて、本家の販売に影響がないものだろうか?
新聞記事には、矢野経済研究所の調べとして、2009年度の国内かばん・袋物の市場規模が、小売り金額ベースで前年度比9・2%減したとあった。やはり付録付き雑誌のバッグブームによって、鞄自体の需要が減り単価が下がったと見られるようだ。

一方で学研の「学習」「科学」が休刊

一方で、昔から工夫をこらした付録でおなじみだった、小学館の「小学五年生」「小学六年生」と学研の「学習」と「科学」が休刊した。

これらの休刊の背景には、読者である子供の減少はもちろんだが、子供の価値観の多様化もあるという。娯楽が増えた現在では一つの雑誌で子供に共通した感心を捉えられなくなり、雑誌作りが難しくなったそうだ。

また、子供の「ものづくり」への感心が薄れた事も一因としてあり、紙の組み立て付録など、手をつかって細かな工作をする事をしなくなり、そうした付録を中心とした科学系雑誌の人気が無くなってしまったようだ。

子供向けの付録付き雑誌が不振な一方で、大人が付録付き雑誌を買い漁るのも時代の流れなのだろうか、子供の頃に雑誌を手に取ったあのドキドキがうまく伝えられないのがモドカしい感じだ。

参考