本記事は、2009年5月21日に掲載された、G-Search sideB記事を再掲載しています。

風薫る五月。GWの大型連休も過ぎ去って憂鬱な毎日かもしれませんが、皆様いかがお過ごしでしょうか。

さて五月五日は端午の節句。この時期、ロト6当選の暁には購入マイリスト上位の甲冑を買ってやるんだと目論んでいるわれわれ夫婦は、子供はいないのに、鎧はやっぱり(源平時代の)大鎧でなくてはダメだとか、なにいっているんだやっぱり鹿角脇立兜はサイコーだなんて、甲冑談義に花を咲かせる日々を過ごしております。

さて今年は、毎年恒例の五月人形商戦にちょっとした異変が起きているという。そこで、G-Searchの『新聞・雑誌記事横断検索』を使って、今年の五月人形商戦に迫ってみた。

五月人形の由来

まずは五月人形のおさらいから。
五月人形とは、端午の節句の際に飾られる鯉のぼりや兜・鎧のことを指す。

赤ちゃんが生まれて、初めて迎える節句を初節句といい、日本では男子の場合五月五日がこの日に当たる(端午の節句)。初節句を祝う習慣は奈良時代から続いていて、大変古い行事なんだそうだ。

端午の節句で飾る五月人形には、外飾りと内飾りがある。外飾りには鯉のぼり、内飾りには兜や鎧、大将飾りがある。こうした五月人形を飾る風習は、江戸時代に一般的になったと言われている。今回取り上げるのは内飾りの方である。

ではなぜ祝い事に兜や鎧を飾るのだろうか。それは武家社会と深い関係がある。
武家における男子は、外においては戦場で敵と戦い武勲を上げ、内においてはお家繁栄のために切磋琢磨するという重大な役割を背負っている。生きるか死ぬかの戦場では、鎧や兜は身を守る大事な武具である。そのため、祝い事の場で武具を奉ることには、強く立派な男として成長してほしいという親族の願いが込められているのである。

伊達政宗に直江兼続が肉薄!

こうした五月人形には戦国武将をテーマにした人形が数多くあり、毎年人気を集めている。ところが今年はこの戦国武将シリーズの人気に変化が生じているという。変化とは何か、早速見てみよう。

■不動の一位は、独眼竜
ダントツ人気は、伊達政宗。独眼竜の異名はやっぱりダテではないようだ。 東北だけでなく全国区で人気の模様。独眼竜ですよ独眼竜。まさに五月人形界のジャイアンツ。「赤い彗星」みたいでかっこいい。

■愛だろ愛
五月人形商戦の今年一番のサプライズは、「愛戦士 直江兼続」の台頭だ。 前年まではマイナーすぎて五月人形の製作すらされていなかったそうだが、そんな直江兼続が、人気・売り上げともに独眼竜を脅かす第二位につけたというのは天晴れ。モロ、大河『天地人』効果。これはわかりやすい。

※兼続といえば前立の「愛」が有名だが、この「愛」は、愛染明王の「愛」(毘沙門天の「毘」みたいなもの)を指す。現代の「LOVE」の意味ではない。

伊達政宗、直江兼続には抑えられているが、戦国の世を平定して江戸幕府を開いた徳川家康も安定した人気を誇っている。こちらは年輩の男性に人気だとか。

五月人形の価格は様々で、下は数万円から始まり、上は100万円以上のものもある。ただ人気の価格帯は、5~20万円くらいだという。

こうした五月人形とは別に、子供がいない人や武具・甲冑好きな人向けのミニサイズの兜・鎧も人気だという。こちらは数千円程度のお手頃な価格なので、手を出しやすい。部屋のインテリアとして飾ってみるのも面白い。

以上人気どころの戦国武将を3人ほどあげてみた。しかし五月人形は、加賀百万石の石川県では前田利家、中国地方に行けば毛利元就が人気になるなど、地域性に富んだ商品である。このコラムを執筆するに当たって地域性や年代別の人気などが分かる数字をあげたかったのだが、残念ながら正確な統計が見つからなかった。ただいろいろ検索した結果、人気のある戦国武将は、先の三人の他に以下の者がいた。

■本田忠勝
徳川四天王の一人。鹿角脇立兜が特徴的で人気。数多の戦場を戦い抜いた
■織田信長
天下統一まで後一歩と迫りながら、本能寺の変で倒れた悲劇の大名。旧秩序の破壊者、風雲児的な実行力の強さが魅力か
■上杉謙信
越後の龍。軍神と称された戦争の天才。ガクトが演じて神秘的な存在に拍車がかかってしまった
■武田信玄
甲斐の虎。政戦両略に秀でた名武将。信長を脅かす存在になるも、無念の病死
■真田幸村
元は武田の家臣。兄信之は徳川方につくも、幸村自身は豊臣方へ。大坂冬の陣で奮戦。大坂夏の陣で敗れ、討ち死

人気の背景を探る

おりしも大不況の渦中にある日本経済だが、五月人形の売り上げは堅調に推移しているという。また、ミニサイズの兜・鎧も安定した人気があるという。

好調の要因の一つは、昨今マスコミを賑わしている「戦国ブーム」の影響がある。歴女や戦国乙女なる言葉に表されるように、若い女性の間でちょっとした戦国ブームが起きている。

ブームの火付け役となったといわれているのが、戦国武将をキャラクターにしたゲームである。昔に比べてゲーム機のスペックが向上し、グラフィック技術も格段に進歩した。そのせいか最近のゲームのキャラはやたら美形ばかりが揃っている。なるほど、女性がハマるのも無理はない。 また彼女らの間では、武将グッズだけでなく城の観光や甲冑の試着ツアーも盛況だとか。渋い渋すぎる。

二つ目の要因はドラマの影響。
これはもう「愛戦士 直江兼続」の台頭にみられるように、非常にわかりやすい傾向だ。 肝心のドラマの方はイマイチな出来だが、関連商品の人気は非常に高まっているみたいだ。 伊達政宗が五月人形界で不動の地位を築いたのも大河『独眼竜政宗』が大きな要因だったというから、来年以降も直江人気は続くのだろうか。興味深く見守っていきたい。

三つ目は理想の男性像としての戦国武将。
最近の若い女性の間では、理想の男性像として戦国武将を挙げる例が少なくないという。 彼女らが戦国武将に惹かれる理由は、意思の強さ、潔さ、芯の強さなんだそうだ。 現代社会の男性がこれらを備えていないから、世の女性は過去の武者に憧れを抱くのか。 そう思うと、なんだか悲しいぞ。がんばれ現代男性。

最後に我々夫婦は、鎌倉散策中にワンオフ制作のミニサイズ大鎧・義経バージョン(小さいんだか大きいんだか分からない名称)を衝動買いしたことがある。夫婦共々平家方の出身でありながら、やっぱり義経はヒーローだよねと怨敵のグッズを買い集めている。 これこそ、恩讐を越えた美しい行為!?

参考