本記事は、2009年5月18日に掲載された、G-Search sideB記事を再掲載しています。

ついに日本国内での「人から人へ」の感染が確認された新型インフルエンザ(H1N1)。感染者数も拡大を見せ始めている。

狭く、特に都会では人口密度の高い日本。
今のところ重症化した患者が出ていないことが幸いだが、最近の海外渡航歴のない高校生が発症していることから、ウィルスはやはり身近に迫っていたのだなということを実感させられる。

ところでこの新型インフルエンザ(H1N1)、どうやって発生したものなのだろうか。 今回はこの点について、G-Searchの『新聞・雑誌記事横断検索』で調べてみた。

インフルエンザのうつる仕組みとは

まず、いきなり理科の授業みたいになってしまうが、インフルエンザウィルスの大まかな構造からご紹介しよう。

インフルエンザウィルスは、遺伝子情報を持っている「核」の部分と、その周囲を取り囲むたんぱく質の「壁」によってできている。

この壁の材料であるたんぱく質は大別すると3種類あり、インフルエンザというとおなじみの「A型」「B型」そして「C型」に分かれる。今回の新型インフルエンザのタイプであるA型は、ヒト・トリ・ブタ・ウマ・ウシなど、多くの動物に対して感染力を持っているのだそうだ。

そして、この壁の外側部分には「H」と「N」の2種類の糖たんぱくでできた突起がある。この「H」と「N」、大まかに分類すると「H(ヘマグルチニン)」が16種類、「N(ノイラミニダーゼ)」が9種類あり、このHとNの組み合わせで「H1N1」といったタイプが決定されるのだそうだ。

この突起が鍵、動物の細胞が鍵穴となり、この形が合ってしまうと、インフルエンザウィルスはその動物に対して感染することができるのだ。

怖いのは「変異」

鍵と鍵穴の関係通り、ヒトならヒト、トリならトリに感染するインフルエンザは、本来は動物の種類を超えて感染力を持つことはほとんどない。ところが、インフルエンザウィルスは頻繁に「変異」する。

この「変異」というのは、核にある遺伝子情報が分裂の拍子に書き変わったり、複数の鍵穴を持っている動物の体内で複数のウィルスが混ざったりといったことで、ウィルスが変化することを指す。

そして変異したウィルスは、簡単に動物の種類の壁を越えてしまうのだそうだ。
今回の新型インフルエンザ(H1N1)も、

  1. 豚の体内でヒトインフルエンザとトリインフルエンザが混ざって新しいブタインフルエンザに変異
  2. 豚の体内で、更に別のブタインフルエンザが混ざって更に新しいブタインフルエンザに変異

と、変異を繰り返して発生したもの、という見方が有力なのだそうだ。

また、”日本では夏を迎えて一旦終息した後、秋以降に強毒化して出てくる可能性もある”という話を耳にした方も多いのではないだろうか。

これも、インフルエンザウィルスが弱いといわれる高温多湿の日本の夏(=南半球では冬)の間、流行している地域でこの「変異」が起こる可能性があるということだ。可能性だけを言えば、その変異で更に強くなった亜種ウィルスが、日本のインフルエンザ流行期である冬に上陸する可能性もゼロではない。

新型でもおなじみでも、予防が肝心!

とはいえ、今回の新型インフルエンザ(H1N1)、今のところ、感染力は高いものの弱毒性で、タミフル・リレンザも効果があることが分かっている。ただ、高熱を発して苦しい思いをするのは誰しもイヤなもの。やはり自衛策として、きちんとした予防をすることが大切だ。

予防といえば手洗い・うがい。様々な場所でも紹介されているが、ここでも、正しい手洗い・うがいのポイントを幾つかご紹介しよう。

【手洗い】
・石鹸の泡をたて、最低でも15秒はかける
・手のひら、手の甲、指、爪の間、親指、手首をしっかり洗う
(特に親指は忘れやすいので注意!)
・よくすすぎ、清潔な布やペーパータオルでよく拭いて、よく乾かす

【うがい】
・まず口の中をゆすぐ”ブクブクうがい”を15秒
・喉をゆすぐ”ガラガラうがい”を15秒

また、飛沫感染を防ぐためのマスクも効果的。

だが、マスクのかけ方・取り扱いには注意が必要だ。
息が苦しくて鼻を出していたり、鼻や頬とマスクの間の隙間を調節していなかったり、また、鼻がかゆくてマスクの表面をつまんでひょいともちあげた手で鼻をこすったり。それでは意味がないらしい。

蛇腹はきちんと伸ばし、鼻と頬はぴったり合うよう調節する。マスクの表面部分には触らない。捨てるときは耳にかけた紐を持って、ビニール袋にそっと包んで捨てる、など。

そして、潜伏期間が10日間あるということを考え、万一かかってしまっても人にうつさないよう「咳エチケット」も重要。咳やくしゃみがでる場合、人の居る方向から顔をそむけ(1m離れる)、手やハンカチやティッシュ、最悪、服の袖などでもいいから、鼻と口を覆う(手で覆った場合は速やかに手を洗う)。

学校や会社などの空間で自分が発生源とならないよう、これも実行するようにしたい。

もしインフルエンザにかかったら

突然の高熱。全身のだるさや頭痛、筋肉痛。そして咳と鼻水。これってもしかして(新型)インフルエンザ? ……と思っても、もうご存知の通り、すぐに病院に行ってはいけない。

まずは市区町村などに設置された発熱相談センターまたは厚生省の窓口に電話で相談し、通常の病院へ行くか特定の病院へ行くかの指示を受ける必要がある。

正直、高熱が出て苦しいときに、相談先を調べて電話で相談して指示を聞いて……というのは辛いものだと思うが、自分が発生源となる危険性や病院側での受診拒否問題などもある。こういった相談先は事前に確認しておく必要があるだろう。

それにしても、「水際対策」での検疫官の防護服姿、海外での死者のニュースなどを見ていると、なんとなく恐ろしい病気のような気がしてしまう新型インフルエンザ(H1N1)。国内での人から人への感染、予想されていたこととはいえ、ついに来たか、と愕然とした方も多かったのではないだろうか。

今後も様々な情報が飛び交うことが予想されるが、正しい情報を確認し、いたずらに怯えないようにしたい。

参考