一般道路を車で走っていると、時折目にする「道の駅」。ドライブ旅行の途中で立ち寄ることを楽しみにしている方も少なくないのではないでしょうか。
ところで、「道の駅」はどんな団体がどのような目的で運営しているのかご存じでしょうか?
この記事では知られざる道の駅の姿を浮き彫りにするとともに、道の駅の抱える課題や今後の展望について俯瞰してみました。

そもそも道の駅とは?

「道の駅」の制度が創設されたのは平成5年。安全で快適な交通道路環境の提供、および地域振興に寄与することを目的として、国土交通省による第11次5か年計画の施策の一環としてはじめて設置が推奨されました。
道の駅は、その多くが市町村や都道府県などの自治体が母体となって設置され、運営・管理は第三セクター、またはJAや民間会社などの指定管理者に委託されるケースが大半を占めています。
平成25年度の国土交通省の報告によれば、1004駅ある道の駅のうち設置者が自治体であるケースが991駅(98.7%)。一見、一般的な商業施設のように見えたとしても、道の駅は立派な公共事業だといえるのです。
道の駅には駐車場やトイレなどの「休憩機能」、観光情報や道路情報、緊急医療情報などの情報を提供する「情報発信機能」、観光やレクリエーションを目的とした施設を設置して地域との交流を図る「地域連携機能」の3つの機能が想定されていますが、具体的な設備の内容は施設ごとにさまざまです。
令和元年6月時点における道の駅は全国で1,160駅あります。令和元年に新たに登録されたのは北海道遠軽町の「遠軽 森のオホーツク」や長野県野沢温泉村の「野沢温泉」、福岡県筑前町の「筑前 みなみの里」などで、いずれも駐車場やトイレ、レストラン、物販スペース、休憩室などを備えた魅力的な施設となっています。

道の駅成功に向けた取り組み

道の駅は、制度が施行された当初は主に観光客を中心とした施設として位置付けられていました。
しかし、近年では地域住民が利用することも増え、地域活性化の中心的な「場」として多方面から期待を寄せられています。実際、道の駅において地域住民によるフリーマーケットを開催したり、野菜や果物などの即売会を開催したりして、地域のにぎわいの場としての役割を果たしているようです。
以下にいくつか具体的な例を見てみましょう。

台風で被害を受けたリンゴを道の駅で販売

平成23年11月には、長野県松本市今井の道の駅で、台風21号の影響で傷物となったリンゴ「サンふじ」の販売会が開かれました。傷物のリンゴは通常の流通経路には載せることができませんが、この販売会では大人気を博し、用意したリンゴが完売となったそうです。
この事例は災害により被害を受けた農家とリンゴを買いたい地域住民や観光客を繋ぐ「場」として道の駅が役立った事例といえるでしょう。

複数の道の駅による共催イベントを開催

複数の道の駅が共同して共催イベントを開くような企画も活発に行われています。平成29年11月には福井県三国市山岸の「道の駅みくに」において、県内15カ所にある道の駅の物産を販売する「福井まるごと in みくに」が開かれました。
このイベントは県内の道の駅の駅長がつくる「ふくい道駅会」の主催で行われたもので、各駅の認知度向上につながりました。

大学との連携によるインターンシップでも

また、平成27年度からは道の駅と大学が連携し、道の駅におけるインターンシップ(就労型の実習)を行うような取り組みも始まりました。平成28年度の報告によれば、全国で63の大学がこの取り組みに参加するための基本協定を締結し、177の道の駅が受け入れを表明しています。北海道の「さるふつ公園」、福島の「ばんだい」、長野県の「上田道と川の駅」などをはじめとした28カ所にある道の駅で実際に実習が行われました。
こうした取り組みの目的のひとつは、道の駅の運営に若者の視点を取り入れることにあります。また、SNSなどを通じた彼らの高い情報発信力を道の駅の認知度向上に役立てることも期待されています。

道の駅が抱える課題

このように地域振興の拠点として多方面から期待を寄せられている道の駅ですが、その一方で、運営上の課題も少なくないようです。特に、近年の人口減少や高速道路の無料化などにより道の駅を訪れる人が減少して思うように売上げが上がらず、運営が立ち行かなくなるケースは少なくありません。
例えば平成29年11月には、北海道で道の駅を運営していたナチュラルフロンティアが、総額約7千万の負債を負って自己破産を申告しました。運営母体が地方自治体の場合はすぐに破産とはならないにせよ、道の駅が経営不振に陥ればそれはそのまま地域の重荷となりかねません。
また、野菜や果物などの農産物を特産品として販売する道の駅では、季節によって陳列する商品がなくなり、販売店としての魅力が低下してしまうといった問題も顕在化しています。
今後加速していくであろう農家の高齢化により、販売するための農産物の確保が困難となる懸念も捨てきれません。

道の駅は地域振興の救世主となるか?

このようにさまざまな課題を抱えつつも、道の駅は衰退の進む地域経済を活性化するための拠点として高い期待を寄せられています。地域のにぎわい創出を担う「場」として「道の駅」が発展していくためには、これまでにない新たな発想による斬新な取り組みがますます求められるようになるのではないでしょうか。
制度設置から20年強が経過したいま、道の駅は大きな転換点に立っているのかもしれません。

gsh