現在、炭酸水市場は無糖炭酸水「ウィルキンソン」を筆頭に、急速な市場成長を遂げています。
近年では、純粋な飲料目的だけではなく美容や健康効果を狙って炭酸水を購入する消費者も増えており、こうした新しい使用目的にも注目が集まっています。
炭酸水市場が拡大するきっかけとなった「ウィルキンソン」の人気の背景を解説するとともに、炭酸水の新しい使われ方についてもご紹介していきます。

生産量が10年間で約10倍に!大手飲料メーカーも多数市場参入

全国清涼飲料連合会が発表した統計データによれば、炭酸水の生産量は2006年時点では2万9000キロリットルでしたが、2016年には20万6000キロリットルと10年間で約10倍にも増加しました。炭酸水市場の盛り上がりを商機と見た大手飲料水メーカーも、多数市場参入を果たしています。

例えば、日本コカ・コーラは2018年3月から、同社の保有する「カナダドライ」ブランドより無糖・強炭酸水「ザ・タンサン・ストロング」「ザ・タンサン・レモン」を市場に連続投入しており、アサヒ飲料では、20代をターゲットとした「ウィルキンソン タンサン ドライ」を販売しています。このほか、サントリー食品も炭酸水飲料開発に注力する姿勢を見せており、今後市場競争が激化していくことが予想されます。

ブームの火付け役はアサヒ飲料の「ウィルキンソン」!

活況を呈する炭酸水市場ですが、こうしたブームのきっかけとなったのは、アサヒ飲料の「ウィルキンソン」だといわれています。

「直飲み」という新しい楽しみ方を提案

ウィルキンソンは100年以上の古い歴史をもつ、日本発祥の炭酸水ブランドです。2010年頃までは主にバーやホテルなどでカクテルの割り材などに使う業務用飲料水として使われており、日常的に家庭で目にする機会は少なかったようです。

大きな転換点となったのは2009年から2010年にかけて起こったハイボールブームです。当時、ウィルキンソンはハイボールを作るための割り材として高い人気を集めていました。しかし、アサヒ飲料が調査したところ、割り材として買った炭酸水が余った場合に、炭酸水を直接飲む、いわゆる「直飲み」して消費しようとする人が多数いることが判明したのです。

この消費者の行動傾向に注目したアサヒ飲料は、無糖炭酸水を単体で飲む楽しさを消費者に十分理解してもらえる市場があるのではないかと考えました。そして2011年、それまで瓶入り商品のみの販売だったウィルキンソンをペットボトル入りで新しく販売開始したのです。

販売数量は10年間で10倍以上に!

欧米などでは食事の場でも頻繁に見かける炭酸水ですが、日本国内では炭酸水を単体で飲むという習慣はあまり一般的なものであるとはいえませんでした。ところが、アサヒ飲料の打ち出した「直飲み」という新しい飲み方は、多くの消費者から支持を得ることに成功しました。

2008年には174万箱に過ぎなかった販売数量も2017年には1990万箱と急激に増加し、現在では無糖炭酸飲料市場のシェア50%以上を占めるまでに成長を遂げました。成功の背景には、消費者のナチュラルな商品を好む傾向が強まったことなども要因であるといわれていますが、いずれにせよ、ウィルキンソンは炭酸ブームの火付け役として広く認知されるようになりました。

健康や美容にも炭酸水ブーム!新しい使い方が登場

現在の炭酸水ブームを支えているのは、飲用目的で購入する消費者だけではありません。炭酸水に備わっている美容や健康効果に注目した需要も高まっています。

汚れ落としや血行促進に効果的?「炭酸水洗顔」が人気

炭酸には皮脂や汚れを吸着する性質があるほか、血行促進や毛穴の引き締めにも効果があり、実際に炭酸成分を配合した洗顔料やクレンジング剤が市販されています。このような炭酸の特性に目をつけた新しいスキンケア方法として注目されているのが、「炭酸水洗顔」です。普段の洗顔に使っている水を炭酸水に変えることで、毛穴の奥にたまった汚れを綺麗にできるといわれています。

ただし、炭酸水洗顔にはその効果を疑問視する声もあります。炭酸水に含まれている炭酸ガスは、通常、肌に触れるとすぐに水と二酸化炭素へと分離します。しかし、本来炭酸を使って十分な美容効果を得るためには、最低でも数十秒は肌に炭酸が触れていなければなりません。このため市販の炭酸水を使う程度では大きな効果は期待できない、と専門家は注意喚起を促しています。

食欲増進、食べ過ぎを抑える健康効果も

美容以外にも、炭酸水はダイエットや食欲増進などの健康効果があるといわれています。例えば冷やした炭酸水を100ml飲むことで、胃の血管が拡張してよく働くようになり、結果的に食欲が増す可能性があります。また、これとは反対に常温の炭酸水を500ミリリットル飲めば、炭酸ガスにより胃が膨張、結果的に満腹感が生じ、過食を抑えることができるといわれています。
ある実験では、2週間炭酸水を飲用した被実験者が500グラムから1キロ程度の減量にも成功したという報告もあります。

「日常的に炭酸水を飲む人」を増やせるか

今後ますます成長を遂げていくことが予想される炭酸水市場ですが、一方で日常的に炭酸水を飲む人はまだまだ少数派であることも事実です。アサヒ飲料は消費者の60%ほどが日常的に無糖炭酸水を飲まない「非飲用層」だと推定しています。無糖炭酸水は、リピーター率は高いが新規ユーザーを獲得するハードルが高いという指摘もあります。将来的に炭酸水市場が成長を続けるためには、日ごろから炭酸水を愛飲する人をどれだけ増やせるかがポイントになりそうです。