消費税の増税による景気支援策として政府が打ち出した案が、中小の小売店などで「キャッシュレス」決済をした消費者に購入額の2%をポイント還元するというものだ。これにより「キャッシュレス」というキーワードがにわかに注目をあつめる事となった。今回はこのキーワード「キャッシュレス」が新聞や雑誌記事でどのように取りあげられていたのか、G-Searchデータベースサービスの「新聞・雑誌記事横断検索」を使い探ってみた。
記事の増加は2014年から
「キャッシュレス」が使われた記事を過去10年遡って、新聞・雑誌記事横断検索で調べてみた。キャッシュレスというワードはかなり昔より存在するが、2014年までは取り扱われる記事件数もそれほど多くなく、記事数の変化もさほどみられない。2014年以前に扱われた記事の内容は主に、業界のキャッシュレス化の動向や、企業のサービス参入の記事だ。
2014年頃からは、企業や銀行のサービス参入の記事に加え、電子マネー、スマートフォン、プリペイドカードなどの決済方法の多様化の記事と、それにともなうキャッシュレス決済のトラブルについての記事が増加、2017年にはついに年間1,300件を超え、3年前の7倍以上の記事件数となった。
海外にくらべ、日本はキャッシュレス化は遅れているといわれているが、キャッシュレス化の波は着実に高まりつつある事がうかがえる。
一気に増加する2018年。要因は消費税の増税対策と「ペイペイ」
そして2018年、一気に7,000件近いキャッシュレスの記事が掲載された。急増の要因は、冒頭で申し上げた政府の消費税増税対策の「キャッシュレス決済にポイント還元」案だ。
政府がこの増税対策を打ち出したのは、先にもふれた日本のキャッシュレス化の遅れが大きな要因だ。これからオリンピック・パラリンピックに加え、大阪万博と大きくインバウンド需要が見込めるイベントが続く日本としては、ここでキャッシュレス化を促進しておきたい政府の思惑が浮き彫りとなっている。
しかし記事によると、キャッシュレス化に対応しなくてはならない中小の小売店としては、これまでの現金商いからキャッシュレス化への変更が困難で、増税対策の中小支援どころか逆に大手に客を取られるのではないかと懸念を感じる店もある。一方で、導入ハードルの低いモバイル決済を導入し新たな顧客獲得に積極的な地方の商工会など、受け止め方はそれぞれだ。
もう一つ記事数を引き上げた要因はQRコードによる決済サービス「ペイペイ」をめぐる話題だ。サービス開始に掛かるキャンペーンは多くの人の耳目をあつめ、話題となったスマホ決済サービス「ペイペイ」。しかしその後クレジットカードの大規模不正利用が発覚。政府はQRコード決済サービスの不正利用防止ガイドラインの策定を検討するなど、大きく取り扱われる事となった。
銀行主導の新電子マネーからお賽銭まで、加速するキャッシュレス化の動き
増税対策以外にもあらゆる業界でキャッシュレス化の動きがある。いくつか例をあげると、コンビニでのスマホ決済対応拡大や、複数の銀行が参加する新電子マネーサービス立ち上げ、お賽銭のキャッシュレス化など、キャッシュレス化が今後加速していく傾向は間違いないようだ。
※今回の記事で調査に活用した、過去30年分以上、1億件以上の新聞・雑誌記事を収録したG-Searchデータベースサービスについてはこちらから。