「Artificial Intelligence」の略語であり、日本語では人工知能と訳される「AI」。AIはさまざまな分野での応用が可能なため、今後はさらに多くの分野で活用され、市場規模も大きく伸びていくと予測されています。そこで、今回はそもそもAIビジネスとはどういったものか、そして、さまざまな分野におけるAIビジネスの現在の導入状況や、市場規模がどこまで大きくなっていくと予測されているのかについて解説します。

市場規模は今後10年で大きく進化する

AIビジネスはその定義によって市場規模も大きく変わります。例えば富士キメラ総研では、AIビジネスの国内市場規模は、2030年には2015年に比べ約14倍の2兆1,200億円に達すると予測しています。これはAIを活用した分析サービスや、AI環境を構築するためのコンサルティング、システムインテグレーション(SI)、AI環境を支えるプロダクト、クラウドサービスなどでの市場規模を予測したものです。
また、EY総合研究所では、AI関連産業の市場規模として2030年には2015年に比べ、約24倍の86兆9,620億円になると予測しています。これはAIを活用した機器、システムなど国内のさまざまな産業分野での市場規模を予測したものです。

このように、一口にAIビジネスといってもどの部分を切り取るかによってその市場規模はまったく別のものとなります。ただ、どちらにしても今後10年でAIビジネスが大きく躍進することは間違いありません。

身近なサービスに活用されているAI

すでにビジネスにAIを活用している事例としては、GoogleやAmazon、LINEが販売しているスマートスピーカーが挙げられます。このスマートスピーカーに組み込まれているAIとは音声認識機能で、ユーザーの問いかけに対し、音楽再生やリマインダー、乗り換え案内などのリアクションを行います。

また、一般的にAIというと「Artificial Intelligence (人工知能)」を意味しますが、IBMではAIを「Augmented Intelligence(拡張知能)」と定義しています。自然言語処理と機械学習を使用した「Watson(ワトソン)」というテクノロジープラットフォームを開発。顧客サポート、採用活動、人材育成支援などの活用で、ゆうちょ銀行、ソフトバンク、金沢工業大学などすでに国内で約200社に導入されています。

ほかにも、DeNAは2018年4月19日、AIを活用した次世代タクシー配車アプリ「タクベル」(現名称「MOV(モブ)」)のサービスを開始。サービス開始時は横浜、川崎市の2市のみでしたが、乗客はこのアプリを使えば予想到着時間を事前に確認したうえで、指定の場所へタクシーの配車依頼が可能です。このアプリに組み込まれたAIは、運行中の車両から収集されたデータとタクシー需要に関連するデータを解析し、乗務員にリアルタイムで走行ルートを推薦します。

業界別、AIビジネスへの取り組み状況

すでに多くの業界で成果を出しているAI。次に、実際にビジネスとしてスタートしていないものも含め、業界別にいくつかその取り組みをご紹介します。

金融

前出の富士キメラ総研の調査では、2030年にもっとも成長すると予測されているのが金融業です。前項でご紹介したゆうちょ銀行を始め、三井住友銀行、みずほ銀行、三菱UFJ銀行などのメガバンクでは主にオペレーターのサポートシステムとして成果を挙げています。顧客サポート以外では、証券会社や信託銀行で、過去のデータをもとに将来的な景気を予測することにAIの活用を進めています。

運輸・運送

運輸、運送業はEY総合研究所の調査でもっとも成長が見込まれている分野です。この分野も前項でご紹介したタクシー配車アプリがすでに実用化されていますが、それ以外にも多くの取り組みが行われています。例えば、ドライバーの疲労度合いや、運転スキル、環境条件などと合わせ、疲労と事故リスクの関係を解明、モデル化をします。これにより、安全・環境に配慮した事故ゼロ社会の実現を目指していく取り組みが進んでいます。

医療・介護

世界に類を見ない超高齢化社会である日本において、医療・介護の分野でのAI活用は、喫緊の課題といえます。この分野でのAI活用は、例えば介護分野で被介護者の1年後の状況を予測し、ほんの数秒でケアプランを作成するものです。医療分野で患者の電子カルテ情報を読み込み、エビデンスに基づいた治療法を表示するものなどが挙げられます。ほかにも医療画像診断支援、介護医療コンシェルジュロボットなど多くの開発が進んでいます。

高齢化社会が進む日本で今後さらに大きく発展

AIをビジネスに活用することで得られるメリットは、顧客の問い合わせに自動応答することでサポートの手間を軽減する。過去のデータを分析し、将来的な仕入れ、販売需要の予測をすることで資材や商品の欠品、不良在庫を防ぐなどが挙げられます。

少子高齢化が進む日本において、労働人口の減少を補うため、そして無駄を排除し既存の業務効率、生産効率を上げることで最大限の利益を上げるための2点が、AIのビジネス活用における主なメリットです。また、医療や運輸の業界において事故を減らし人の命を救う、介護業界において介護者の負担を軽減するなどといった、大きな役割も担っています。そういった意味で私たちの生活にAIが入り込んでくることは、もはや必然といっても過言ではなく、今後その規模はさらに大きく発展していくと予測されます。