2018年1月22日、米ネット通販大手のAmazonはシアトルにレジをなくした無人のコンビニ「Amazon Go」(アマゾン・ゴー)をオープンしました。スマホに専用アプリをダウンロードするだけで商品を棚から出す、戻すといった客の動きをカメラやセンサーで認識、店の外に商品を持ち出すと課金され、レジに並んで精算する必要がありません。
Amazon Goは、2018年10月時点で全米5店舗営業していますが、2021年までに3000店舗に増やす予定ともいわれています。今後、AIの進化によって無人コンビニが増えることが予測されており、日本を含むアジア各国でも同様の動きがすでに始まっています。
今回はAmazon Goを中心に、無人コンビニの未来の可能性についてご紹介します。
Amazonが無人コンビニを運営する理由とは?
Amazonは、なぜ、無人コンビニの運営を始めたのでしょうか。「普及が進んだネット通販では事業の急拡大が見込めないため、リアル店舗への進出で成長を加速させるため」という見方をするアメリカのアナリストもいるようです。
また、Amazon Goは顧客に新たな購買体験を実現させるためのものという意見もあります。最近では多くのスーパーに無人レジが設置されています。これは顧客が購入する商品のバーコードを自分でひとつずつスキャンして精算する、いわゆるセルフレジです。これに対しAmazon Goは店舗にレジ自体がなく、購入したいものを陳列棚から取り、そのまま店舗の外へ出れば自動で精算されるため、レジに並ぶ、通すといった一連の手間がかかりません。これまでになかった新たな購買体験といえます。
ほかにも、ネット通販ではできない、顧客の行動データを取得するため、2017年4月にAmazonが買収したアメリカの大手スーパー、ホールフーズで将来的にAmazon Goの仕組みを利用するためといった多くの意見が出ています。
Amazon Goが抱える問題点
まったく新しい購買体験を実現するAmazon Goですが、問題点がないわけではありません。
例えば、友人や親子など複数人で店舗に入り、店舗内で商品の受け渡しをした場合、棚から商品を取る際の行動がそのままバーチャルカートへの追加と認識されてしまうため、正しい精算が行われなくなります。
また、現在のAmazon Goは商品補充や入口のゲート監視人、店舗の案内をするスタッフなどのほかに店舗内で食材加工もしているため、実際にはそれほど広くはない店舗で10人以上のスタッフが働いています。AIの進化により人間の仕事が奪われるのでは?といった不安に対しては、現状ではそれほど心配ないといえますが、人件費削減が無人コンビニの目的のひとつだとすれば、その実現はできていません。
このほかにも、ハッカーによるシステムの侵入があった際の対応はどうするのかといった問題点もあります。しかし、これらの問題点の多くはAIのさらなる進化や実験を繰り返していくことで克服できる可能性が高いといえます。
アジア各国での無人コンビニの実例
次に、アジア各国ですでに始まっている無人コンビニの取り組みをご紹介します。
日本・オフィスに拡大する無人コンビニ
2017年7月、ローソンはオフィスビル内に1畳ほどのスペースで商品棚と無人レジを設置する「プチローソン」の取り組みを始めました。この店舗では自分で選んだ商品をバーコードリーダーにかざし、交通系電子マネーで支払います。また、このプチローソンとは別に、レジを通らずにスマホを使って決済ができるサービスもローソンの一部店舗にて2018年4月より始まっています。商品のバーコードをスマホアプリのカメラで撮影するだけで支払いが完了するので、レジに並ぶ必要がありません。
また、セブン-イレブン・ジャパンもオフィスビル内に顔認証で来店者を把握してキャッシュレス決済ができる無人コンビニ店舗を2018年12月にオープンしました。この店舗は、特定企業の社員専用コンビニです。事前に登録した社員の顔データを使った顔認証により入店できます。会計はセルフレジでカメラによる顔認証や社員証で手続きが完了、給与天引きで支払いとなり現金決済は行いません。
2018年6月よりサービス開始したオフィス向けの無人コンビニ600は、クレジットカードによるキャッシュレス決済が可能。同社は、2024年までに1万箇所への設置を目指すと発表しています。
このように日本では、オフィス向けの無人コンビニが拡大を続けています。
中国・すでに約30都市、200店舗の展開をしている「Bingo Box」
アジアのなかでも特に無人コンビニが発展しているのが中国です。無人コンビニのスタートアップであるBingo Boxが1店舗目をオープンしたのは2016年8月。QRコード活用で入店管理、RFIDタグによる商品管理、会計および決済を行います。その後1年あまりで広州、大連など約30都市、200店舗にまで成長しています。
韓国・ソウル:無人コンビニ「セブン-イレブン・シグネチャー」
2017年5月、韓国ソウルにオープンした無人コンビニ「セブン‐イレブン・シグネチャー」は顧客がゲートに手をかざすと事前に登録した静脈情報と照合し、本人認証をして入店。購入する際は商品を無人レジのベルトコンベヤに置き、手をかざせば決済が終了します。静脈認証決済による無人コンビニは世界で初の試みとなっています。
台湾・台北市:台湾初となるコンビニ無人店舗「Xストア」
台湾初の無人コンビニは2018年1月29日にオープンした「Xストア」です。この店舗はコンビニエンスストア台湾最大手「セブン‐イレブン」を運営する統一超商で、華南商業銀行が発行する統一超商のポイント付与機能付きクレジットカードへ登録し、本人照合は店舗の出入り口に設置された顔認証システムを活用します。
マレーシア:アイリス・ワールド・インターナショナル(IWI)の「アイリスペイEコンセプト・ストア」
2018年1月、マレーシア初の無人コンビニ「アイリスペイEコンセプト・ストア」を手掛けたのはモバイルアプリなどの開発を手掛けるアイリス・ワールド・インターナショナルです。この店舗では、「アイリスペイ・アプリ」を使うことにより自動レジでキャッシュレスでの買い物が可能になります。
無人コンビニの未来は?
Amazon Goをはじめとする無人コンビニへの取り組みは、すでに多くの国で始まっています。特に、中国などアジアでは積極的な展開がなされており、この流れは今後さらにスピードを上げ進んでいくと予測されています。
人手不足や人件費削減など必要に迫られて拡大していくともいえますが、新たな購買体験の実現といった未来を感じさせるものであることも確かです。
まだまだ発展途上ではあるものの、いま以上にストレスのない購買体験が実現することはそれほど遠い将来ではなさそうです。