2018年2月17日、藤井聡太5段は、第11回朝日杯将棋オープン戦において、準決勝で羽生善治竜王、決勝で広瀬章人8段を相次いで破り、15歳6か月という最年少記録で棋戦優勝を果たし、同日付で史上最年少の6段に昇進をしました。
これまで、史上最年少棋士記録、公式戦通算50勝の史上最年少記録など、さまざまな最年少記録を更新してきた藤井聡太6段ですが、ここにまた新たな記録更新を果たしたことになります。

また、3月8日には第68期王将戦の1次予選2回戦で師匠である杉本昌隆七段との師弟対決が実現。藤井六段が見事勝利し「恩返し」をしました。

今回は、藤井聡太6段のデビューからこれまでの軌跡と、これから期待されることについてご紹介します。

藤井聡太6段、これまでの軌跡

藤井聡太と聞くと、多くの方はプロ入りしてからの29連勝を思い浮かべられるのではないでしょうか。2016年12月24日、それまでプロ入り史上最年少記録を持っていた加藤一二三9段からの勝利を皮切りに、2017年6月26日までの半年間で、彼は将棋界だけではなく、日本中の注目の的となるほどに有名になりました。

特に、同年4月に入りプロデビューからの連勝記録である11連勝を更新したあたりからは、テレビ、雑誌などで連日のように報道され、彼の顔を見ない日はないというほどの活躍ぶりでした。

数々の記録を塗り替えてきた藤井聡太6段。彼が最初に話題になったのはいつでしょうか?
新聞記事データベースで調べると、まだ小学1年生だった2009年6月に「第八回倉敷王将戦県大会」に出場し準優勝した記事が中日新聞なごや東版で見つかりました。その後も毎年、敷王将戦に出場し小学3年生の全国大会で見事優勝を果たすなど、この頃から様々な将棋大会での活躍が、新聞記事から見つかっています。

そして2016年10月1日付けで、14歳2か月という史上最年少で4段に昇格しプロ入りを決め、14歳5か月で史上最年少での公式戦初対局初勝利。佐々木勇気5段に敗れるまで29連勝を続け、その後、2018年2月1日に史上最年少での5段昇格を果たしたのも束の間、そのわずか半月後の2月17日には史上最年少での6段昇格。2018年2月18日時点での公式戦成績は66勝11敗と、その躍進ぶりはとどまるところを知りません。

藤井聡太6段、その強さの秘密は?

彼はなぜ数々の記録を打ち立てるほど、将棋が強いのでしょうか。ここではその将棋の強さの秘密について考察していきます。

詰将棋で頭角を現す

彼は通常の将棋だけではなく、詰将棋においてもその強さを発揮しています。多数のプロ棋士や奨励会員も参加する詰将棋回答選手権チャンピオン大会にわずか8歳で初参加し、23人中13位の成績を残すと、その4年後の同大会において史上初の小学生での優勝を果たし、その後2017年まで3連覇を達成しています。

詰将棋が強いことがそのまま将棋の強さに必ずしも結び付くわけではありませんが、彼の研究熱心さや、集中力、洞察力がこの詰将棋によっても培われていることは間違いありません。

AIを駆使し弱点を克服

彼の強さの要因のひとつとして、従来の将棋の定石にとらわれない仕掛けの早さが挙げられます。これにはAIの影響が色濃く出ているといわれています。

彼は奨励会3段のころから、気になった棋譜はすべてAIで分析し、その結果を間違いのない形勢判断や最善手を探るための手段として活用しています。

実際に、将棋の師匠である杉本昌隆7段は、それまで彼の弱点であった序盤・中盤をAIの活用によりでこんなにも早く修正して強くなるとは思わなかったと話しており、AIの効果を認めています。

これ以外にも、小さいころからのご両親や祖父母の教育であったり、環境であったりとさまざまな要因が重なり合うことで、彼の強さが形成されていることは間違いありませんが、何より藤井聡太6段本人が自身の才能に溺れることなく、強くなるための努力を欠かしていないことが強さの最大の秘密であるといえます。

次に求められるのはタイトル奪取

現在、将棋には「竜王」、「名人」、「王位」、「王座」、「棋王」、「王将」、「棋聖」、「叡王」の8大タイトルがあります。藤井聡太6段はまだどれも手にしてはいませんが、現在の彼の勢いを考えれば、近い将来何かしらのタイトルを奪取する可能性はかなり高いといえます。

2018年2月18日現在、叡王戦、棋聖戦、王位戦の3つのタイトル戦ではすでに敗れてしまっていますが、それ以外の5つのタイトル戦では勝ち進んでいます。

直近では、王将戦、棋王戦があるため、ここでどの程度まで勝ち進んでいくのかが、現在の注目ポイントです。

最大の期待は八冠

2017年12月5日、羽生善治竜王は竜王戦第5局で渡辺明竜王に勝利し、永世七冠という称号を手に入れました。そこで注目されていることは、八冠のすべてを手にする棋士が現れるのかどうかということです。現時点では、羽生善治氏がもっとも近い位置にいることは間違いありませんが、もう一人、その八冠を期待されている棋士が、藤井聡太6段です。

まずは1つ目のタイトルを取ることが大事であることはもちろんですが、八冠という大きな夢も決して夢ではないと思えるところが彼の強さのなせる業であるといえます。

将棋ファンに限らず多くの方が羽生善治竜王との八冠争いを期待しているのではないでしょうか。