インターステラテクノロジズ株式会社(以下、インターステラ)は2018年4月30日に、創業者の堀江貴文氏にちなんで「ホリエモンロケット」とも呼ばれる小型ロケット「MOMO2号機」の打ち上げを見送り、夏以降に再設定すると発表しました。

成功していれば、民間企業による宇宙空間へのロケット打ち上げとしては国内初の事例となったホリエモンロケット。本記事では民間ロケットビジネスの現状を解説し、また、民間企業によるロケット開発時の工夫もあわせてお伝えします。

超小型衛星の登場が、宇宙ビジネスの門戸を広げた

現在、ロケット開発を通じた宇宙ビジネス市場が世界的な盛り上がりを見せています。
アメリカの実業家イーロン・マスク氏がCEOを務めるスペースXをはじめ、NASAが出資したヴァージン・オービットやソフトバンクが資金提供を表明したワンウェブなど、多数の民間企業が激しいロケット開発競争を繰り広げているのです。

ロケット開発競争が激化する理由には、技術進歩によって小型かつ高性能な「超小型衛星」が製造可能になったことが挙げられます。超小型衛星とは100kg以下の衛星で、数トンの重量がある大型衛星に比べるとかなり軽量に仕上がっている点が特徴です。

これまでの衛星打ち上げプロジェクトでは、衛星を大型ロケットに搭載して打ち上げる方式が一般的でした。しかし、大型ロケットの打ち上げには民間企業では負担しきれないほどの莫大な資金が必要です。そのため、衛星打ち上げプロジェクトは国家主導で進められるケースが大半でした。

しかし、大型衛星の代わりに超小型衛星を使うことで、一つのロケットに大量の衛星が搭載可能となります。1回あたりの打ち上げコストが大幅に減るため、民間企業もロケットビジネスを収益化できるようになったのです。

一方でこうした大型ロケットに相乗りする打ち上げ方法の場合、主衛星の都合に合わせ、打ち上げ時期も軌道も選べない不便がありました。そこで、小型で安価な超小型衛星専用ロケットの開発が注目され、ホリエモンロケットを開発するインターステラも、超小型衛星の打ち上げビジネスへ食い込む事を狙っています。

ホリエモンロケットの工夫1:ロケット製造コストを低く抑える

民間企業によるロケットビジネスを成功させるためには、できる限りロケットの製造コストを低く抑えるように工夫しなければなりません。
例えば、インターステラの場合は「いかにして高性能なロケットを開発するか」ということよりも、「どれだけ低コストで簡単にロケットを製造できるか」を重視したロケット開発を行なっています。

インターステラがロケットに求めるのは最低限の飛行能力だけです。ロケットの性能を高めるために特殊なパーツなどは一切使用しません。街中で揃えられるような一般的な材料、工作機械だけを使うことにこだわり、安価なロケット製造を目指します。

しかし、低コスト化の実現は容易ではありません。特に問題となるのはエンジンの製造コストです。エンジンはロケットを構成する部品のなかでも特に高価なパーツです。低コスト化を図るうえで、エンジンの製造コストを抑えることは必須条件となります。一方で、エンジンはロケットの飛行能力の根幹を担う重要なパーツです。むやみにコスト削減を行えば飛行能力の安定性が失われかねません。

このため、エンジンの低コスト化は慎重に進める必要があります。インターステラもエンジン性能のテストを繰り返し行うなど、実用化可能なエンジン開発に注力して取り組み、ホリエモンロケットに自社製造のエンジンを積み込んでいます。

ホリエモンロケットの工夫2:ロケットの小型化

ロケット製造の低コスト化とあわせて、インターステラは別のプロジェクトにも着手しています。
超小型衛星のサイズに合わせた専用小型ロケットの製造です。

現時点では超小型衛星打ち上げ用ロケットは存在せず、打ち上げ時には大型衛星を搭載したロケットの空きスペースに載せてもらうという「相乗り方式」が採られています。この方式では打ち上げ時期や、軌道投入のタイミングは大型衛星の打ち上げスケジュールに左右されます。このため、超小型衛星を持つ顧客の都合に応じて衛星を打ち上げることができません。

しかし、専用小型ロケットがあれば相乗り方式に頼らずに、超小型衛星を主衛星として打ち上げられるようになります。
打ち上げ時期の柔軟な調整が可能になるなど大きなメリットがあるため、インターステラは2020年の打ち上げを目指して専用小型ロケットの開発に取り組んでいる最中です。

こうした開発を進めているのはインターステラだけではありません。
2017年にアメリカ企業のロケットラボは超小型衛星用2段式ロケット「Electron」の打ち上げ実験をニュージーランドで実施しています。このように世界中で小型ロケットの開発が進展しており、今後の動向に期待が集まっています。

民間ロケットの盛り上がりに期待

民間企業がロケット開発に挑戦しやすい環境が生まれたことで、今後は新しい分野の宇宙ビジネスが発展していくのではないかと予測されています。

現在は、地球観測網の構築や衛星通信の配備と運用などが宇宙ビジネスの主要事業となっていますが、人工流れ星や宇宙葬など新しい分野も発展していくことになるでしょう。民間ロケットビジネスの将来に注目です。