本記事は、2009年10月2日に掲載された、G-Search sideB記事を再掲載しています。

”サメ”と聞いて、まず何を思い浮かべるだろう。

ダイビングに興味のある人ならジンベイザメやネコザメなどの大人しく一緒に泳げる”サメ”を思い浮かべるだろうし、中華料理が好きな人はフカヒレを想像するかもしれない。しかし、大半の人は「凶暴」、「危険」、「獰猛」などのイメージが先行して出てくるのではないだろうか。

たしかにホホジロザメなどの一部のサメには警戒が必要だが、これら人に自ら危害を加えるサメは20~30種類と言われ、サメ全体の1割にも満たないことをご存知だろうか。

そんな”サメ”が絶滅の危機に瀕しているという。真相を確かめるためにG-Searchの「新聞・雑誌記事横断検索」で調べてみた。

”サメ”は生きた化石

まず、サメのことを少し勉強してみよう。

サメの起源はなんと4億年前にまで遡る。しかも、出現したときから現在に至るまでほとんど姿形が変わっていないらしい。

大きさは平均的には1m~3mくらいであるが、最大のジンベイザメとなると15mくらいのものまでいる。世界に約500種類が生息し、世界中のいたるところで見ることができる。

なお、スクーバダイビングでは、ハンマーヘッドシャークやジンベイザメを見ることを目玉としてツアーが数多く存在し、ダイバーたちの憧れの存在にもなっている。

絶滅の危機!?

今年の8月、国際自然保護連合の専門家グループが”サメ”に関する調査結果をまとめた。

これは、遠洋のサメやエイ64種類のうち、20種に絶滅の危機が迫っているというもの。また、ジンベエザメやウバザメ、ホオジロザメなどを含む16種類が「絶滅の危険が増大している種」と評価された。

グループによると大きな原因は次の2つ。

  • マグロはえ縄漁などの際に目的とは異なって捕獲される「混獲」
  • 中華料理の高級食材であるフカヒレの需要が高まったことによる「乱獲」

これらの中には日本が漁業対象にしている”サメ”や沿岸に回遊する”サメ”も多く含まれており、今後の漁獲に対して賛否が高まることが予想される。

他の生物とは違った見方をされる”サメ”

同じく今年の8月、クロマグロについて国際取引の全面禁止を求める提案をアメリカ政府が検討していることが判明した。来年3月のワシントン条約締約国会議で提出される可能性があるという。

絶滅危惧種としては同じ境遇のはずのクロマグロと”サメ”だが、サメについてはこれまで捕獲に関する規制はなかった(※1)。絶滅の恐れが強まっているのに、各国の資源管理も国際的な漁業規制もほとんど行われていないのが現状である。

この違いは何か。

おそらく冒頭に書いた「獰猛」「危険」な生物であるというイメージが先行しているからではないだろうか。 マグロやクジラが絶滅の危機に瀕していると聞くと、おそらく一般市民も含めた保護運動への声が高まるだろう。

しかし、”サメ”と聞くと人間を襲う動物としてのイメージが先行し、捕獲制限への賛同があまり得られなかったのではないか。これに加え、”サメ”のヒレは高級食材フカヒレとなることから、乱獲に歯止めが効かず今日の状況を生んでしまったのではないかと推測する。

※1 アメリカウナギ、アオザメやシュモクザメ、アブラツノザメなどこれまで規制がなかったサメやエイ約10種の国際取引を新たに規制対象とし、輸出入時に許可証の発行を義務付ける提案も検討中。

危険な生物にさせないために

一方で、捕獲制限をすることによる海水浴客やサーファーなどへの危険度が上がるという見方も存在する。

5年ほど前から”サメ”の捕獲量の制限をしているオーストラリアでは、”サメ”の生息数が増えたことにより沿岸の海水浴客やダイバー、サーファーが”サメ”に襲われる事故が相次いで起きているという。

海は人間が住む世界ではない。

”サメ”も含め自分たちと違う世界にいる生物には大小問わず危険があると考えるべきである。普段は大人しい生物も、自分に危険が迫った場合は人間に危害を加えることが十分にありえる。

見た目やイメージの先行により危険性の高い生物として名高い”サメ”も、大半の種類が自ら率先して人間を襲うことはない。むしろ、人間が自ら危険を招き寄せてしまうケースのほうが多いという。

4億年も前から地球に生息する大先輩を、人間のエゴで絶滅させてしまうことだけは避けていきたい。

用語解説 「ワシントン条約」
「絶滅の恐れのある野生動植物種の国際取引に関する条約」が正式名称。国際商取引による生物の絶滅を防ぐ目的で1973年に採択された。日本は80年に加盟。絶滅の恐れが特に強い種は付属書1に掲載し国際的な商取引を禁止。今後、絶滅の恐れが強まる可能性がある種は付属書2の対象種として、輸出に際し国の許可証の発行を義務付け、貿易を管理する。付属書への新規掲載や変更は、締約国会議に各国が提案。投票国の3分の2以上の賛成で認められる。

参考