過去最高の2,844億円、ふるさと納税の魅力と抱える課題

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ふるさと納税の人気がますます高まっています。自治体ごとにさまざまな特色のある「返礼品」の魅力が話題を呼び、2016年度には納付額が過去最高の2,844億円に達したと報じられました。しかし、この規模拡大は過剰な返礼品競争を呼び、今年には総務省が各自治体へ「自粛」の要請を出すにいたっています。そんなふるさと納税の魅力と課題について見ていきましょう。

ふるさと納税といえば「返礼品」

2008年に登場し今年で10年目を迎えるふるさと納税。言葉自体を「聞いたことがない」という人はほとんどいなくなったのではないでしょうか。ふるさと納税とは、特定の地方自治体に対して行う寄付金のことで、集まった寄付金でまちづくりや災害時の復興支援などを行う、地方創生を目的とする制度です。

寄付者にとって最大の魅力となっているのが、それぞれの地方自治体から届く「お礼の品」です。その中身は土地で作られた肉や野菜といった農作物から、工芸品、その土地の温泉宿への宿泊券など、多種多様です。この点が非常にユニークなため、ふるさと納税を「地方の特産物のお届け制度」だと理解している人もいるかもしれません。

返礼品はあくまで自治体が決めることで、義務でもなんでもありません。特産物や寄付がなされた活動の報告などを通じて、寄付者一人ひとりにその街を「知ってもらう」機会になることが、長期的なスパンで見た地方創生の施策として大きなポイントといえるでしょう。なお、ここでの「ふるさと」とは、自分の出身地に限らない、つまり自由に選んだ自治体に対して寄付ができるというものです。「ふるさとチョイス」を運営する株式会社トラストバンクのPR動画でも「新しいふるさとを見つけよう」と謳われています。

寄付金としてのポイントと手続き方法

「返礼品」に注目が集まりがちなふるさと納税ですが、納税といいながらも「寄付金」であるという点がなかなかユニークな制度だといえるでしょう。なぜなら、これは個人住民税の寄付金税制を利用したものであり、各自の所得によって決まる控除額の範囲内であれば控除となるからです。寄付したお金は確定申告後に住民税・所得税から差し引かれて戻ってきます。控除額は2,000円以上が対象のため、実質的には寄付者の負担額は2,000円で済んでしまうというわけです(一般的な場合。所得に応じた計算が必要ですが、ふるさと納税関連サイトでシミュレーションを提供しているものもあり、簡単に見積もることができるようになっています)。

また、寄付金としては「寄付者が具体的な使い道を指定できる」ことは大きな特徴であるといえます。ほとんどの自治体では子育て支援や文化・環境保全といった形の具体的な使い道を示しています。送る側は寄付した活動の成果を知ることで地域活性化に貢献していることをより具体的に実感することができ、受け取る側の地方自治体としてもどのような活動や課題に関心が集まっているのか知る手がかりとなるため、使途の見える化はこの制度の非常に重要なポイントです。寄付金が災害時の復興支援に使われるケースもあり、地方支援のポピュラーな手法として広く浸透してきたことはこの制度のひとつの成果といえます。

こうしたふるさと納税の具体的な手続き方法は、次の通りです。自分の控除額を確認したうえで寄付したい自治体を選び、申し込みます。Webが簡単ですが、そのほかにもカタログやFAX、電話での申し込みも可能です。寄付金の支払い方法については銀行振込やクレジットカードといった従来の方法だけではなく、コンビニや携帯電話による決済を受け付けている場合もあります。一定期間を経て自治体によっては返礼品が発送されますが、受け取りの際にもらえる「寄付金受領証明書」を大切に保管しましょう。この証明書によって確定申告で控除を受けることになりますが、2016年から始まった「ワンストップ特例制度」によって毎回の寄付の際に「特例申請書」を提出することで確定申告なしで控除が受けられるようにもなりました(上限5回まで)。

返礼品競争、大都市の税収減 ふるさと納税が抱える課題

成功した地方活性化施策のひとつとして語られることもあるふるさと納税ですが、開始当初から議論されていたものも含めてさまざまな課題を抱えていることも事実です。 そのひとつに挙げられるのが、返礼品の過剰競争です。この制度の目的はあくまで「地方活性化」です。そのため、先にも述べたようにそれまでに知られていなかった地方の取り組みや課題を知ってもらったり、その地域そのものに関心を深めてもらったりすることがねらいです。しかし、現実には「どのような返礼品がもらえるか」が寄付者の最大の関心ごとであるという調査結果が出ています(2016年3月、株式会社インテージリサーチによる調査)。残念ながら、これは一部の自治体による高額な品物や商品券などをお礼とすることで多くの寄付者を獲得しよう、という本来の趣旨とは違った行動を加熱させる結果につながっています。政府はこのような動きに対して2017年4月に「返礼品の調達費用(コスト)は寄付額の3割以下になるように」と自粛要請を出しています。

また、寄付をする「ふるさと」は寄付者が自由に選べるため、大都市に入るべき税収が地方に流出しているという指摘もあります。たとえば、東京都に住んでいて宮崎県に寄付をしたとしても、住民税から控除という形で税収が減るのは宮崎県(地方都市)ではなく東京都(大都市)だからです。もともとこの制度は、都市圏で働いて納税している人が「故郷に還元する」という意味もありました。しかし、返礼品競争が過熱する現状では、結局魅力的な品を用意できた自治体に寄付が集まり、人口が多い分必要な税収も多くなる大都市の負担が増えるだけ、という結果になっています。

本当に大切なのは寄付の使い道

地方を活性化するために始まったこの制度は、地方自治体の税収増につながっただけでなく、災害時の寄付金集めには効果を発揮し、一定の評価がなされています。しかし、実際には単なる「お得な制度」と受け取っている寄付者が多いのも事実です。トラストバンク代表取締役の須永氏はインタビューにおいて、京都府長岡京市を例に挙げながら、寄付金増のためにはより具体的な使途を示すことが重要であると述べています。今後の課題を解決するためにも、政府からの通知も出たこのタイミングで寄付者・自治体双方とも本来の目的に立ち返ることが、今後の発展が続く鍵かもしれません。

G-Searchでもっとサガス

記事本文でも課題として上げられている「返礼品の豪華さ」が注目されがちな「ふるさと納税」ですが、そんな中、地元ならではの特色やアイデアで効果を上げている自治体もあるようです。
G-Searchの新聞記事データベースを使い、各地の動向を調べてみました。

福島・小野町 リカちゃん 復興の担い手に テーマパークにぎわう ふるさと納税返礼品にも

2017年6月29日付 東奥日報 夕刊

河童プラモデル 人気沸騰 妖怪で町おこし福崎町 肌質リアル、2000個完売

2017年7月16日付 神戸新聞 朝刊

その他にもアサリ不漁の一因となる貝や農作物に被害を出すイノシシなどを駆除しつつ、返礼品として商品化して特産にするという一石二鳥のアイデアを実現させた自治体もありました。

中部発 美浜・ツメタガイ瓶詰 アサリの天敵特産に

2017年6月19日付 中日新聞 夕刊

江迎のイノシシ肉 「特産品」に定着/地元飲食店で常時提供/ジビエ料理ブーム 全国から注文

2017年2月10日付 長崎新聞 本紙記事

※このコーナーでは「G-Searchデータベースサービス」の新聞・雑誌記事検索を使い情報を探しました。

参考

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