6月から確認が相次ぐ「ヒアリ」の国内生息は防げるのか

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環境省は7月7日、「東京港大井ふ頭で7月3日にヒアリが発見されたコンテナを詳細に調査したところ、新たに100匹以上のヒアリが確認された」と発表しました。6月9日に兵庫県尼崎市でヒアリの集団が初確認されて以来、これでヒアリの国内上陸確認場所は5カ所になりました。ヒアリの国内生息は防止できるのでしょうか。今回は、ヒアリの危険性とその生息を許してしまった場合の影響、生息を防ぐ対策などをみていきます。

「殺人アリ」と呼ばれるヒアリとは?

ヒアリとは南米原産の毒を持ったアリのことを指します。体長は2.5ミリから6ミリと日本在来種のアリより小型ですが、攻撃性が強く、ヒアリに刺されると火傷をしたような激痛が走り、アレルギー反応の程度によってはアナフィラキシーショックを起こし、最悪死に至るケースもあります。

「殺人アリ」とも呼ばれ、保健衛生関係者の間で、かねてから国内上陸が懸念されていました。2017年現在、米国、オーストラリア、マレーシア、中国、台湾など14カ国で生息が確認されています。日本国内では上陸が確認されたものの、幸い生息はまだ確認されていません

国内生息を防ぐため、ヒアリは「外来生物法」により「特定外来生物」に指定されており、無許可の輸入、販売、飼育などが禁止されています。違反すると最高3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科されます。

なお、「危険な外来生物」といわれる「特定外来生物」は2016年10月1日現在、哺乳類、鳥類、魚類、昆虫類など10類群132種類が指定されており、ヒアリを含む昆虫類は9種類に上っています。ちなみに、東京都内では今回のヒアリを含め5種類の昆虫が発見されています。

ヒアリの生息を許してしまうとどんな影響が……?

仮に、ヒアリの国内生息を許してしまった場合、具体的にどんな影響が予想されるのでしょうか。
ヒアリは雑食性の昆虫で、植物を食い荒らすのはもとより、同類の昆虫から鶏、子牛など小型の哺乳類まで集団で襲いかかり、捕食する習性があります。したがって、ヒアリが国内で生息・繁殖すれば生態系のバランスが崩れ、農業やインフラに甚大な損害を与えると言われています。

例えば農業の場合、ヒアリは花蜜、柑橘類の樹液、ジャガイモやトウモロコシの種子などを好物にしており、これらの栽培農家は直接的な被害が心配されます。また、鶏、牛なども襲われる可能性が高いことから、畜産農家の被害も心配されます。これらの被害は、ひいては、野菜、果物、畜産物(鶏肉、牛肉、牛乳・牛乳加工品など)などのコスト高要因となり、食材の価格高騰を招く可能性が避けられないと言えるでしょう。

また、ヒアリは電流に引き付けられる習性も持っており、インフラへのダメージも予想されます。
例えば、電流に引き寄せられたヒアリは電線の被覆をかじり取るため、停電や放電火災を発生させます。家電製品、パソコンなどの電機・電子機器の電流に引き寄せられたヒアリの集団は、これら機器の誤作動・作動停止を引き起こす要因になり、工場の操業一時停止、信号機故障による交通混乱などを引き起こす可能性があります。

実際、ヒアリ問題が深刻な米国では、農畜産物を含め年間5,000億円以上の被害を受けていると言われています。

ヒアリ対策の基本は「早期発見、早期駆除」

ヒアリを見つけた場合の駆除について、環境省の『ストップ・ザ・ヒアリ』は次の3つを示しています。

熱湯をかける
ヒアリ塚とその周辺に熱湯をかける。熱湯を直接浴びたヒアリは死ぬが、それ以外のヒアリ駆除は不可能。
駆除液剤散布
ヒアリ塚に駆除液剤を高圧散布する。駆除液剤を浴びたヒアリはもとより、駆除液剤を浴びたヒアリがアリ塚内で接触した他のヒアリにも駆除効果がある。
毒餌設置
顆粒状やゼリー状の毒餌をヒアリ塚の周囲に設置する。働きアリが毒餌をアリ塚内に持ち帰ることによりヒアリが駆除される。時間はかかるものの、熱湯かけや駆除液剤散布より駆除効果が高い。

これらはヒアリ生息を許してしまった場合の対策ですが、生息を防ぐには「ヒアリの早期発見、駆除」が何よりも重要と言われています。ヒアリは繁殖力が強いので、生息をいったん許してしまうと瞬く間に全国に拡散する恐れが高く、根絶が難しいからです。
実際、ヒアリ上陸に見舞われたニュージーランドは、「早期発見、早期駆除」で生息を見事に防止しています。

いずれにしても、ヒアリがアリ塚を築き、生息環境を整えるには1年から1年半の時間がかかると言われています。ヒアリの国内生息を防止するためには、何よりもモニタリング態勢の強化により発見率を極限まで高め、その場で駆除する初動対応が何よりも重要なようです。

G-Searchでもっとサガス

今年6月のヒアリ上陸が確認されてから、国内ではヒアリ関連で連日さまざまな報道がなされました。フマキラー(株)が環境省と神戸市に駆除剤を無償で提供、フマキラーの株価が急騰したのは記憶に新しいです。その他の影響についてもG-Searchデータベースで探してみました。

アリ用殺虫剤の需要がヒアリが確認された関西から全国へ波及

東北から九州で計334店舗を展開するコーナン商事(堺市)は、この3週間で売上高が約7割増えた。ロイヤルホームセンター塚口店(兵庫県尼崎市)ではアリ用殺虫剤のみを置く特設売り場を設け、陳列する商品数も約3倍に増やした。6~7月の売上高は前年同期比5割増。

毎日新聞 2017年8月16日記事より

東京・品川区にあるホームセンターでは近くの大井ふ頭でヒアリが確認されたことから、アリを対象とした殺虫剤の売り場を増やした。この店ではアリ用の殺虫剤の売上げが10日~の1週間で前年同期比で10倍以上に増えたという。

テレビ番組放送データ NHK総合 2017年7月26日 午前7時00分~放送内容より

量販店での需要高まりにメーカーも増産へ

アース製薬(東京)は7月から「アリの巣コロリ」など殺虫餌の2品目を増産。7、8月の2カ月の出荷量は前年同期比2倍になる見通し。フマキラー(東京)はアリ用殺虫剤の8月以降の生産分を前倒ししたため、7月の生産は前年同月より1割以上増えた。大日本除虫菊(大阪市)は殺虫剤「アリキンチョール」などの生産を例年のように7月上旬に終了せずに延長した。アリ用殺虫剤が品薄となったためだ。

毎日新聞 2017年8月16日記事より

ヒアリ対策に敏感に反応した住宅メーカも登場

住宅メーカーもヒアリ対策を進めており、ヒアリにも効果があるとされるホウ酸を住宅の土台や柱などに散布した「ヒアリが来ない家」を売りにする会社も。

テレビ番組放送データ テレビ東京 2017年7月27日 午前16時54分~放送内容より

参考

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