ブームの兆し「マストドン」が与えるビジネスへの影響

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マストドンというSNSが話題になっています。短文投稿型のシンプルなSNSながら、数か月で爆発的にユーザ数が増えて一気に注目度が高まったのです。今回はそんなSNSの新星、マストドンの概要を紹介するとともに、ビジネスではどのような活用が可能か考えていきます。

マストドンとは?

マストドンとは、登場して1年足らずの非常に新しいSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)です。ドイツのオイゲン・ロッコ氏が開発、2016年10月にオープンソースのソフトとして公開されました(GNU Affero General Public License v3.0 )。サービスの内容としては、Twitterに近く、短文で投稿された内容が時系列にタイムラインに表示されていきます。今年に入ってから利用者が急増し、イラスト系SNS最大手のピクシブがインスタンスの提供を開始した4月以降、日本のユーザが爆発的に増えました。

そんなマストドンの最大の特徴は、Facebookのような特定の一社が提供するサービスではないという点です。最初に便宜上サービスとして紹介しましたが、正確にはマストドンとはSNSを構築するソフトウェアの名前で、これを使って誰でも自分のサーバでサービスを運用することが可能になります。

これらの個々のサーバを「インスタンス」と呼んでおり、いってみればマストドンとは同じインターフェースを持ったたくさんのコミュニティの連合として存在するSNSなのです(違うインスタンスのユーザを「リモートフォロー」してつながることもできます)。この特徴から「分散型」と呼ばれています。

人気の秘密とは?

では、そんなマストドンが短期間で大きな人気を博すにいたった理由とはなんなのでしょうか。それを知るためにはTwitterと比較するとわかりやすいでしょう。

Twitterにはないタイムライン

すでに触れたように、マストドンはTwitterに非常によく似ている、というよりはTwitterのスタイルを踏襲したSNSといえるでしょう。マストドンではツイートのことを「トゥート」、リツイートは「ブースト」といい、任意のアカウントをフォローすることでホームのタイムラインが成り立ちます。

ただし、マストドンにしかないものが「ローカルタイムライン」と「連合タイムライン」です。前者は自分のインスタンス内のすべて、そして後者は自分が連携している別のインスタンスに投稿されるすべてのトゥートが表示されます。インスタンスとは、同じような趣味や興味を持ったアカウントで構成される一種のコミュニティなのですが、2つのタイムラインはそれぞれのコミュニティに参加しているという意識を持つのに役立つでしょう。これは、単一のタイムラインにすべてが投稿されるTwitterでは不可能だったことです。

インスタンスによる「閉じたコミュニケーション」

マストドンが斬新なのは、SNSによるコミュニケーションを従来のような開かれた場所での情報交換から、同好の士だけで集まって盛り上がるという「閉じたコミュニケーション」に発想を転換したことです。

一社が提供する特定のSNSに参加するというスタイルは、すべての人にとってわかりやすくかつオープンであるため、得られる情報量も非常に多かったといえます。しかし、その反面、オープンであることは発信できる情報の制限につながる場合もありました。同じ嗜好を持つ人に向けて発信したつもりでも、ときに違うタイプの参加者にはその発言が不快なものに感じられることがあるからです。

マストドンはこうした課題を「最初からグループを分ける」ことで解決しています。つまり、ユーザ数の増加で発信しづらくなった「コアな」会話のニーズをうまくとらえたといえるでしょう。そのための具体的な機能としては、下記があります。

  • Twitterが140文字のところをマストドンでは500文字までの字数制限としてより深い投稿をうながす
  • 映画やアニメの“ネタバレ防止”に使われる「もっと見る」機能の実装
  • 不特定多数への開示に向かない場合は「不適切な画像」と表示させてみだりにタイムラインに流入させない

これらの機能を備えることで、これまでとのSNSとは違った会話を楽しめる環境がつくられています。

ビジネスにおける可能性

ここまでで見たように、マストドンは従来のSNSがカバーできていなかった需要に対応したサービスです。まだ始まって間もないサービスなので未知数な部分もありますが、SNSそのものの転換点になる可能性もありえます。

というのも、先に挙げたピクシブをはじめ、ドワンゴ(ニコニコ動画)や堀江貴文氏(ビジネス系のトーク中心)らも自らのインスタンスを立ち上げており、この「発想の転換」にはIT業界のトッププレイヤーたちが早くも反応しているのです。

また、IT業界以外の企業であってもマストドンがビジネスに生きてくる可能性は大いにあります。

昨今のマーケティング分野では、マス媒体への広告から、個々のニーズや属性に合わせたターゲティング広告の重要性が叫ばれています。この流れのなかでSNSによる双方向のコミュニケーションはますます重要になってきており、個々のニーズに対してプラットフォームそのものを複数用意できることは、顧客の囲い込みやターゲティング広告をするうえで非常に有用です。

地域おこしとして注目される「鹿トドン」

大企業以外の活用事例として紹介したいのは、「鹿トドン」というユニークなインスタンスです。このインスタンス、もともとは奈良県にあるWeb制作会社によって県民がトークを楽しむ場「奈良トドン」としてスタートしたのですが、鹿になりきって発言をするユーザが急増、話題性を受けて名称そのものまで変更されました。

現在では1000人以上が参加するコミュニティに発展しており、奈良県の地域おこしになると期待されています。想定とはまったく違う形とはいえ、まさに「限られた」ニーズに焦点を当てることで人気が出た好例といえるでしょう。

ビジネスでの活用は大いにあり!?

登場してから短期間で注目される存在となったマストドン。そこにはSNSが今後舵を切っていくひとつの方向性が示されているのかもしれません。「閉じた」コミュニティであるマストドンが、ビジネスシーンでどのように活用されるか注目されています。

G-Searchでもっとサガス

今後の広がりが注目されるマストドン。マストドンに関する情報をG-Searchデータベースを使ってもっと探してみました。早速、マストドンは誰が・何を目的として作ったのか、設計・開発した「オイゲン・ロッコ」氏について調べると、開発の狙いについて書かれた記事を見つけた。

「自分たちのコミュニティーをつくり出す力を、人々の手に」。開発者であるオイゲン・ロッコ氏は、自身のブログで開発の狙いをこう述べる。
(ネット点描)急拡大「マストドン」 大手SNSの対抗軸に(朝日新聞 2017年5月2日記事より)

フェイスブックやツイッターなど、大手企業が運用するSNSサービスは、仕組みや利用者の情報がどのように扱われているか、ユーザは知ることができません。大手企業の作った枠組みに取り込まれているようなものです、そうしたある意味で閉鎖的なサービスに対抗する意図で、広告も企業からの投資も受けずに作られたサービスという背景が紹介されています。

マストドンは日本での関心が特に高く、利用者が多いインスタンスの1位と2位は、国内企業と個人による運営とのこと。趣味や嗜好によるネットワークが多く生み出される日本のユーザが、自分たちのコミュニティをどのように作り上げるか、今後の展開が期待されます。

参考

オープンソースのソフトとして公開されました(GNU Affero General Public License v3.0 )。

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