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現代の漁業が抱える問題を解決するためのAI活用

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日本の漁業・養殖業生産量は、毎年下がり続けています。2018年の「水産白書」によると、2017年度の漁業・養殖業生産量は431万tで、前年に比べ5万t(1%)減少しています。この傾向は今年だけのものでありません。2007年の漁業・養殖業生産量は572万tであるため、わずか10年間で実に約140万tも減少しています。
漁業・養殖業生産量が年々減少していることの理由は決してひとつではありません。天候、乱獲、地震や津波などさまざまな原因が重なったことに加え、漁業従事者の減少も大きな要因となっています。実際、農林水産省が公開している「漁業労働力に関する統計」によると、2018年の漁業従事者の数は15.2万人で、2009年の21.2万人から6万人も減少しているのです。

そこで、現在漁業が抱える生産量減少を解決するために多くの企業がAIを活用した取り組みを開始しています。

さまざまな理由で減少が続く漁獲量

冒頭でも説明したように、現在の日本の漁獲量は年々下降の一途をたどっています。その理由は、地域や魚の種類によってそれぞれ異なります。例えば、青森県八戸港では3年連続でスルメイカの水揚げが減少していますが、その理由は、東シナ海で冬に生まれ太平洋側を北上して日本海を南下する冬季発生群のスルメイカの資源状態が悪化していることが、近年の不漁の大きな要因になっています。
また、岩手県では秋サケの漁獲量が1996年をピークに減り続け、2016年には最盛期の約10分の1にまで落ち込んでいます。その理由は2011年の東日本大震災後に稚魚の放流数が減ったことに加え、海水温の変化も影響しているとみられています。通常、稚魚の成育に適した水温は5~13度とされていますが、近年は3~5月の放流時期の海水温が高くなる傾向があり、13度を超える時期も早まっていることで、稚魚が生き残って成魚になる数が減っている可能性があるということです。

また、漁獲量が減少していることで経営環境が悪化していること、そして、高齢化などで漁業者の数自体も減少しています。冒頭でも触れたようにわずか9年で漁業従事者が6万人も減少しているうえ、現在もこの傾向に歯止めがかかっていない状況です。

ほかにも、さまざまな理由で漁獲量は減少をしています。これまで日本の漁業では、漁場を決めるときなど熟練した漁師の勘や経験が不可欠でしたが、漁業従事者の高齢化などに伴い、遅かれ早かれ勘や経験などの技能に頼る漁業は行えなくなります。そのため、新たな方法を導き出す必要があります。

漁業にAIを活用することのメリットとは?

現在、さまざまな大学の研究機関や企業によって漁業を安定した産業とするための取り組みが行われています。そのなかでも注目すべきは、AIを活用したものです。
2017年6月13日付けの北海道新聞によると、はこだて未来大学、北海道大学、室蘭工業大学と日立製作所が、AIやIoT(モノのインターネット)を活用して魚が捕れる漁場や漁獲量を予測するシステムを開発すると発表しました。これまでの水揚げデータと定置網用の魚群探知機から得られるデータをAIが分析、適切な漁場と漁獲量を予想できます。
また、事前に魚が集まる漁場がわかるだけではなく、クロマグロやスルメイカといった特に資源量が減少している魚種の幼魚の漁獲を避けることも可能になります。

このシステムを導入すれば、限られた人数であっても効率的な水揚げができるようになること、そして、幼魚の漁獲を避けられるようになることで、資源保護につながることの2つのメリットを享受できることになります。

養殖分野においてもAIを活用した取り組みが開始される

漁業へのAI活用は、養殖事業にも取り入れられています。2017年8月、NTTドコモは、農業や漁業といった一次産業向けにAIを活用した新たなIoTソリューションの提供を開始すると発表しました。養殖の生簀(いけす)内の環境は日々刻々と変化しており、魚への給餌の量、方法、タイミングは経験則に基づいて見極められていることが多く、その最適化は養殖事業の大きな課題となっていました。
そこで、開始されたのが「双日ツナファーム鷹島実証実験」です。具体的には、マグロの養殖事業の経営効率改善を目的とし、電通国際情報サービスと共同で、IoT・AIを活用した実証実験を開始しました。長崎でクロマグロの養殖を行っている双日ツナファームーム鷹島に対し、水温や溶存酸素濃度等の生簀内の内部データと、気象情報等の外部データを活用した給餌タイミングや給餌量の最適化に向けた検証を行います。これにより、生簀内環境の改善、給餌量のタイミングが最適化されるようになれば、経験に頼らないクロマグロの養殖が可能になり、日本の養殖事業の高度化が進むことになります。

AIを活用し、漁業も新たな時代へ

AIを活用することは、日本の漁業が抱えているさまざまな問題を解決するための非常に有効な手段となります。特に、高齢化によるベテラン漁師の減少が止まらない現在、勘と経験がなくてもできる漁業を確立しないことには日本の漁業は近い将来、壊滅的な状況にもなりかねません。
2019年4月には、京都大学と海洋研究開発機構(JAMSTEC)の研究者が、水産・海洋を事業ドメインとする会社「Ocean Eyes」を設立しました。最新の海洋水産AI技術(FishTech)を用いて、持続可能な水産業・海洋産業を実現することを事業理念としています。海況の予測を行うシステム「SEAoME(しおめ)」と、漁場の決定を支援する「漁場ナビ(仮称)」を提供しています。
日本の漁業はAIを取り入れることで、確実に新たな時代へと進んでいます。現在はまだ始まったばかりですが、AIの力を使って日本の漁業が今後どのように進化していくのか期待できます。

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