空飛ぶ車が商用化しそうってご存知でしたか?SFの産物であった空飛ぶ車を開発する動きは、世界中で加速しています。空飛ぶ車によって、モビリティ・社会はどのように変わるのでしょうか?空飛ぶ車が実現する未来に迫ります。

そもそも空飛ぶ車って何?空飛ぶ車最新動向

空飛ぶ車。なんと、夢のある4文字でしょうか。そんな、スクリーンの中でしか走らなかった車を実現しようという動きが、近年加速しています。

米航空宇宙局(NASA)によると、空飛ぶ車は「地上走行が可能な小型飛行機」であり、「自動車運転免許証で操縦でき」、「時速240~320キロメートルで1300キロメートル以上離を恒速走行できる」、「5人乗り以下の自動車」と規定されています。端的にいうと、『地上と空を利用してすばやく目的地まで到達できる乗り物』を空飛ぶ車と定義しています。

空飛ぶ車を商品化しようという動きは世界中で高まっています。Googleの共同創業者ラリーペイジが空飛ぶ車に出資していることは有名ですが、他にも様々な企業や政府が空飛ぶ車の商用化に動いています。2017年9月にはアラブ首長国連邦で、タクシーとして利用することを目指して、空飛ぶ車の試験飛行を行いました。2017年11月8日には米配車サービス大手ウーバーが、28年までに小型のEAV(電気飛行機)を使った「ウーバー・エア」を開始すると発表。日本でも、CARTIVATOR(カーティベーター)がトヨタ自動車と富士通の支援のもと、空飛ぶ車の2030年までの商用化を目指しているそうです。2020年の東京オリンピックで、聖火を空飛ぶ車で運ぶ計画もあるんだとか。

現在、全世界であわせて15のスタートアップが空飛ぶ車の商用化を目指しています。また、エアバスやエンブラエルなどの大企業も空飛ぶ車に取り組み始めています。

近年になって、空飛ぶ車が注目され始めた理由

最近になって、空飛ぶ車がこれほど注目されるようになった理由は大きく2つあげられるでしょう。1つはアラブ首長国連邦やウーバーなど、ある産業を代表するような組織が空飛ぶ車に熱心に取り組み始めたことがあります。これら大組織の動きは、空飛ぶ車とは無縁のテンセントなどがスタートアップに巨額の出資をすることを誘引し、空飛ぶ車の開発をさらに活気づけています。

もう1つは技術の進歩によって、空飛ぶ車を開発する環境が整ってきたことが上げられます。空飛ぶ車の実現には、垂直で安全に離着陸するという複雑な仕組みを開発しなければなりません。この仕組みは、飛行機とヘリコプターを組み合わせると表現されるような技術的に困難なものでした。しかし、近年の機体デザイン、エンジンとバッテリーの技術革新によって実現への道筋がみえるようになってきました。

しかし、残念ながら空飛ぶ車が未来のモビリティにもたらす影響は広く評価されているわけではないようです。「空飛ぶ車に期待されている渋滞解消効果は自動運転技術の進展によって解消できる、それも空飛ぶ車ほどの費用を投じずに解決できる」という意見や、「セグウェイと何が違うのか」と空飛ぶ車の開発を疑問に感じる意見も耳にします。 実際に、開発各社のホームページをのぞいてみると、夢のような技術の進歩を強調する一方で、どのような便益を社会にもたらすのかについてはあまり記載がありません。空飛ぶ車は期待先行で開発が進み、実際にどのように商用化するのかということに関してはあまり議論が進んでいないようにも見えます。この期待先行の視点が、トヨタ、グーグルやテンセントなどの「出資すれども開発せず」という奇妙な構図を生み出しているのかもしれません。

空飛ぶ車のメリット 空飛ぶ車で社会はこう変化する!

けれど、空飛ぶ車はただファンタジーを実現するだけでなく、世の中のモビリティをさらに便利にする可能性を秘めています。というのも、空飛ぶ車はヘリコプターと自動車の長所をあわせもつことができる車だからです。この新しい車は私たちの生活に次のような変化をもたらすでしょう。

1)遠地までの移動時間と手間を大幅に削減できる。

従来、飛行機や高速鉄道、高速バスを利用し、短時間で遠地に向かう際には、自宅→空港A(駅A)→空港B(駅B)→目的地というステップを踏まなければならなりません。そのため、移動時間が非常に長く、同時に非常に手間がかかってしまいます。乗り換える際には、それぞれの交通手段で待ち時間と徒歩での移動が発生。飛行機に搭乗したり、高速鉄道に乗車したりするためにはあらかじめチケットを購入しなければなりません。最寄りの空港や駅から目的地まで向かう移動手段も確保しなければなりません。

しかし、空飛ぶ車を利用することでこれらの移動時間の長さと手間はどちらも解決します。なにしろ、空飛ぶ車を利用すれば、自宅→目的地ですむわけですから。待ち時間も徒歩での移動時間もありません。また空を航行して自宅→目的地の最短距離を移動できるため、移動時間は従来に比べて大幅に削減できます。加えて、目的地付近で移動手段を確保する必要もありません。空飛ぶ車は遠地までの快適な旅程を実現するでしょう。

2)空港や道路を有効に活用することができる。

現在、世界中の飛行機は比較的少数の大型空港に発着するのみで、小規模な空港がほとんど活用されていないそうです。空飛ぶ車は、小規模の空港にニーズを満たす安全で楽しい手段となりえるでしょう。また、空飛ぶ車が普及し、道路のニーズが低下すれば、巨額の維持費を必要とする高速道路などのインフラを維持する必要がなくなります。維持費の圧縮によって、あまった予算でより生産性の高い事業に投資できるでしょう。加えて、ニーズがなくなった道路や駐車場の土地を店舗などとして有効に活用できるかもしれません。

3)新しい体験をもたらす

空飛ぶ車によって、“空”が市民にとって身近なものになり、エンターテイメントとして新しい体験や楽しさを生み出すでしょう。

空飛ぶ車「Sky Drive」を開発している日本発のベンチャーCartivatorは、新しい体験を通じて運転手の満足感を高めるような仕組みづくりにも取り組んでいるようです。Cartivatorのクラウドファンディングページによると、『観光スポットのタクシーやレンタカー会社に“空飛ぶクルマ”を提供し、時間貸しで使っていただくサービス』の提供や『ウェアラブルカメラの搭載により、風景や車内の映像を記録・編集することで、乗っている最中のみならず、乗った後も楽しめる工夫を仕掛け、最高の旅の思い出作りをサポート』する機能をSky Driveへ実装しようとしています。

これらの、構想が実現すれば、新しいエンターテイメントとして産業が発達すると同時に、特別な食事や広告、発着場の建設など、さまざまな関連ビジネスの需要が生まれます。いわば、「空飛ぶ車関連マーケット」が拡大するかもしれません。新しいエンターテイメントは、若年層の車離れを防ぐことにも一役買うかもしれません。

まとめ

これまでに上げたメリットのほかにも、空飛ぶ車によって災害時の輸送の円滑化や渋滞の解消が実現するといわれています。ただし、空飛ぶ車を開発、商用化するためにはまだまだ問題が山積しているようです。テスラモーターズCEOのイーロン・マスク氏も安全性、技術性、騒音問題など、空飛ぶ車の克服しなければならないデメリットを指摘しています。しかし、近年の技術革新の速度は速く、メーカー各社は矢のようにこれらの問題を解決し、20年台には空飛ぶ車が本当に走り始めるのではないかと期待してしまいます。空飛ぶ車でドライブする未来が待ち遠しくて仕方がありません。